表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン4
561/2290

第53章 沈黙する空


平壌・朝鮮人民軍総参謀部 地下指揮中枢


司令室の壁全面に張られた電光地図から、東海岸の防空シンボルが次々と消えていった。赤く点滅していた円が灰色に変わり、やがて完全に消灯する。


「……どういうことだ?東部防空区のレーダー群が一斉沈黙?予備系統は?」参謀長(人民軍中将)が、机を叩いて叫んだ。


通信士官が、震える声で報告する。「予備も応答ありません。東部第一から第三管制所と通信断。衛星回線は帯域ゼロ、短波・マイクロ波とも不通です」


「敵の電子戦か、物理破壊か——どちらだ!」


隅にいた情報分析員が、か細い声で答えた。「……両方かと。現地から断片的に入った報告では、『空が閃光に包まれ、直後に電源と無線が同時に落ちた』とのことです」


別の参謀が立ち上がる。「南東部のKN-06発射隊が、目標補足不能で射撃中止を要請しています!」


「撃て!補足できなくとも——!」


「司令!追尾レーダーが沈黙している以上、撃っても誘導できません!」火器管制参謀が、声を荒らげて反論する。


その瞬間、平壌南部の防空司令所からも通信が途絶した。防空網の「背骨」が、わずか数分で砕け散ったのだ。


「このままでは平壌上空まで——」作戦副総参謀長(少将)が、絶望的な言葉を口にしかけた。


「黙れ。最高司令部に伝えろ……東部防空区は事実上壊滅。西部隊は直ちに臨戦態勢に入れ」


参謀長の命令が飛ぶが、司令室の空気には、すでに**「空が見えない」恐怖**が満ちていた。レーダーがないということは、敵の影を視覚以外で捕捉できないということだ。


その「影」は、すでに第二波としてこちらに向かっている——誰も口には出さなかったが、全員がそれを悟っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ