第45章 斬首作戦開始直前 干渉点の覚醒
(日本海・原子力空母ロナルド・レーガン/医務室)
医務室は白い蛍光灯に照らされ、壁際には生体モニターと軍用通信端末が並んでいた。
ケヴィン・ハートマン少佐——コールサイン Falcon-12 は、拘束ベルトでベッドに固定され、額には複数の脳波センサーが貼り付けられている。
マイヤーズ博士(米海軍研究局)
「電極の配置、左前頭前野と右前頭極を確認。——深部磁気刺激(dTMS)と神経同調波送信を同時に開始する。」
医療士官
「脳波ベースライン、安定……送信準備よし。」
送信装置が低く唸り、超低周波のパルスがFalcon-12の脳内を震わせた。
モニターには急速に変化する脳波スペクトル——アルファ帯からシータ帯への落下、その先に不明な周波数ピークが立ち上がる。
カレン・マイヤーズ博士
「……きたわ。“感応周波数”だ。」
次の瞬間、ハートマンの瞳孔が開き、呼吸が浅く速くなる。
彼の意識は、まるで艦の外へ吸い出されるように離れた。
(視界転換)
——夜間の街灯。湿った舗装路。遠くで回るレーダーの低い唸り。
眼下を黒塗りの車列が通り過ぎる。後部座席の顔——目標人物——が一瞬、月光に照らされる。
(医務室)
ハートマン(震える声で)
「……元山市南西……工業団地前……三両目、黒のメルセデス。」
医療士官(慌てて通信回線を開く)
「艦長! 対象位置を口頭で伝達しました、方位と速度も!」
マイヤーズ博士(興奮)
「これはハッキングじゃない……彼の脳が、過去と現在のISR情報を統合して“直接取得”しているのよ。」
モニター上では、彼の脳波に時空干渉の既知パターンが重なり、記録されていく。
それは80年前の大和艦橋での視覚記憶と、現代の偵察データが、同じ“座標”に収束する瞬間だった。
マイヤーズ博士(低く)
「——よしこれで、艦長の言っていた、大統領コードを奪える。」