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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン4
545/2347

第37章 開戦 8時間後の海図


 艦橋の片隅で、野間はタブレットの画面を食い入るように見つめていた。

 海図の上には、赤と青の小さなアイコンが無数に瞬いている。それは日本海のはるか北、冬の海に浮かぶ一隻の小型漁船から送られてきた暗号化データだった。


 送信者は、大友——野間の助手

 いまや彼は、漁網の影で衛星回線を握る“大和の目”だ。

「艦長、現状をまとめます」

 野間は一息で言った。


「台湾侵攻、開始から8時間。

 アメリカの空母打撃群は、まだ第一列島線の外側——宮古島の東300キロ付近で展開中です。理由は単純、突っ込みすぎれば中国の長射程ミサイル圏内にどっぷり入るから。今は“入るなライン”を海と空で押さえてる」


 雨宮艦長は短く頷く。

 「つまり、まだ前に出ていないと」

「そうです。その分、台湾上空はF-35やF-16Vが押さえてますが、制空はギリギリ。

 一方、尖閣では中国の上陸部隊がドローン攻撃で半壊。残存兵力は海岸線に散らばってます。

 けど、中国は撤退命令を出してません。映像で見える限り、まだ抵抗してる」


「宮古は?」

「まだ手付かず。ですが——」野間は画面を指でなぞった。


「福建沿岸から空発のYJ-12系対艦ミサイルを積んだ爆撃機が七機、バシー方面へ向かっています。


 米海軍は迎撃の準備をしてますが、外周のイージス艦が一隻、危ない位置にいて、そこを抜かれると空母群が覗かれる可能性がある」


「要するに——」野間は深呼吸した。


「今は三正面です。

 一つ目は台湾海峡での空戦。

 二つ目は尖閣での局地戦。

 三つ目は宮古—バシーラインでの**“見合い”**。

 どこか一つでも穴が空けば、中国が一気に押し込む形です」

 雨宮は視線を海図に落とし、低く呟いた。


 「穴を塞ぐには……我々が動くしかない、か」


 艦橋の窓越しに、灰色の海面を低く掠めて帰投する大和の攻撃型ドローンが見えた。

 次の飛行に備えて、腹に新しい弾薬を抱えている。


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