第29章 初陣 空中ドローン
防衛省・市ヶ谷庁舎、地下三層の統合戦況分析室。
スクリーンには、魚釣島西岸と南小島に散開する赤い熱源——兵力推定1500名。迫撃砲、12.7mm重機関銃、HQ-17短SAMの熱像が明瞭に浮かんでいる。
運用部長が低い声で言った。
「南小島のミサイル座、完成まであと90分。これを許せば与那国〜石垣の航路は閉ざされます」
海幕防衛部長が唇を噛む。
「奪回は政治判断待ちだ。だが、放置すれば……」
南條忠義大尉が口を開いた。
「大和には、攻撃型ドローン群がある。弾薬も積んでおる。
即時に排除すれば、橋頭堡は成立せん」
室内の空気が一瞬止まった。
航空幕僚監部作戦課長が即座に反応する。
「ドローン攻撃は武力行使に当たる。国会承認もなしに——」
雨宮艦長の声がそれを断ち切った。
「尖閣は日本領土だ。侵入者を排除するのは武力行使ではない、“警察権”だ」
統幕長が深く息を吐き、短く問う
「成功の確率は」
運用部長が端末を見ながら答える。
「大和の攻撃型ドローンは短距離巡航弾頭搭載型6機、空対地ミサイル搭載型10機。
衛星リンクと艦載光学で同時誘導可能。初弾命中率は92%」
南條が畳みかける。
「敵はまだ掩体構築途中、熱源は丸見えだ」
統幕長は数秒の沈黙の後、言葉を落とした。
「——やれ」
運用部長が即座に無線席に向かう。
「大和艦長に通達——攻撃型ドローン群を発進、南小島・魚釣島西岸の敵火点を即時排除せよ