第24章 ステルス型ドロー潜航艇
「UUV-3、目標海域まで残り二海里」
艦橋後部の無人機管制卓で、管制士・佐久間一尉が声を押さえて報告する。
再武装大和の格納庫から発艦した全長8メートルのステルス型ドロー潜航艇は、音響自己航法と慣性航法を併用しながら、海底地形に沿って低速で進んでいた。
推進音は水中電動インペラー。外殻は音響吸収材で覆われ、船体の断面はわずかに楕円形。
水温躍層を抜けた瞬間、海水の圧が船体を押し包む。
センサー群は、受動ソナーで東側に低周波を感知——中国海警の大型巡視船のスクリュー音。
西側からは、より規則的なガスタービンの唸り——海上自衛隊の護衛艦のものだ。
潜望鏡を上昇させる指令が送られ、細いマストが水面を破る。水滴がレンズを滑り落ち、視界が開けた。
東方2,000m、灰白色の船体。舷側に「中国海警33102」の青い文字。
甲板上には長距離放水砲と、衛星通信アンテナ、20mm機関砲のシルエット。
船首は南西へ向き、速度はほぼ停止。海保の接近を待っているような挙動。
レンズをわずかに回す。
北西2,400m、灰色の艦影。
海上自衛隊・あきづき型護衛艦。艦番号は「116」。
76mm速射砲の砲身がわずかに左舷に振られている。
火災は鎮火。ダメージコントロール有効確認
マスト上のFCS-3レーダーが回転し、赤外線監視装置が海警船方向をロック。
佐久間一尉がモニターに映る映像を拡大し、報告を始める。
「中国側、海警33102。距離2,000。日本側、116護衛艦。両者の間隔は約4.4km、双方停船状態」
艦橋の空気がわずかに張り詰める。
「UUV-3、引き続き低視認で監視。万一の衝突に備えて映像を記録」
艦長の短い指示に、一尉は即座に応答する。