第13章 大和艦橋
艦橋前方の大型スクリーンには、グローバルホークからの中継映像が映し出されている。右舷から細くたなびく灰色の煙の帯は、被弾して退避する護衛艦の無残な姿を物語っていた。
重苦しい沈黙の中、低い、しかし鋭い声が響く。ジャーナリスト・野間遼介の声だった。
「……この巨艦が尖閣領域に入ったら、中国に正当な反撃理由を与えるだけですよ。海自艦艇の増派には時間がかかりすぎる。空自は日本海で手一杯だ。——もう、『あれ』を使うしかないでしょう」
コンソールに向かっていた航海長の指が、ぴたりと止まる。射撃長が顔を上げ、副長・雨宮遼太は険しい表情で目を細めた。艦長・南條正義の眉間には、深い皺が刻まれていた。
「……なぜ、その存在を知っている」南條艦長の声には、警戒と動揺が混じっていた。
「記者だからこそですよ。匂いを嗅げばわかる。この船はただの“戦艦”じゃない。陸、海、海中、空の四つのドメインを同時に制圧できる、ドローン母艦だ」
一瞬、艦橋全体が静まり返る。その沈黙は、「動揺」を隠すためのものだった。
南條艦長は、その言葉を振り払うように絞り出す。「だが、官邸の機密解除の許可がなければ、発艦はできない」
「来ますよ、必ず。命令が。許可が下りてから準備を始めていては遅すぎる」野間は確信に満ちた口調で続けた。
「艦長、私も賛成です。即時準備に入るべきです」副長・雨宮が南條艦長に詰め寄る。
南條艦長は、しばし沈黙した後、意を決したように命令を下した。
「……第一、第二ドローン管制班、発艦準備を開始せよ。潜水型、海上型、空中型、全群スタンバイ!」




