第131章 ホワイトハウス:D-10のシチュエーションルーム
厚い鋼鉄の扉が閉じられると、外界の音は完全に遮断された。
ホワイトハウスの西棟地下にあるシチュエーションルーム正面の大型マルチスクリーンは、4Kパネル6面構成。左から順に、北朝鮮・東倉里の衛星画像、傍受周波数の分析チャート、発射場周辺の三次元地形モデル、北東アジア全域の米軍・同盟国艦艇位置、そして予測行動シナリオのタイムラインが映し出されている。
大統領は欠席。代わりに中央正面には国家安全保障顧問(NSA)が座り、国防長官、統合参謀本部議長、国務長官、CIA長官らがそれぞれの席についていた。会議が始まった。
NSA(国家安全保障顧問) 「まずは映像をご覧ください。これは昨夜のSAR画像です。東倉里発射場の南側に、新しい天幕構造が設置されています。寸法は22メートル×8メートル、高さ約7メートル」
DNI(国家情報長官) 「SIGINT(信号情報)では、発射場防空部隊と上級司令部間で、旧式VHF帯のリンクテストが確認されました。この信号パターンは2017年の火星-15型準備時と97%一致します」
CJCS(統合参謀本部議長) 「ただし、燃料車両や移動式発射台の移動はまだ確認されていません。これを『発射準備』と断定するにはまだ早いでしょう」
SECDEF(国防長官) 「在日米軍と在韓米軍には、警戒態勢を1段階引き上げるよう指示しました。日本海のイージス艦は、非公表で哨戒ラインを30海里前進させています」
SECSTATE(国務長官) 「外交ルートでは北京に対し、北朝鮮の軍事活動に関する『懸念』を非公式に伝えます。ただし、公表は避け、向こうに我々の探知能力を悟らせないように」
CIA長官 「ヒューミント情報では、現場近くの市場に燃料搬送業者の車列が目撃されています。タイミング的には、D-7〜D-5でのロールアウトが予想されます」
NSA 「結論として、この情報は本日中に大統領日報に格上げし、ブリーフします。偵察衛星のリビジット間隔は4時間ごとに短縮、SIGINTは常時傍受モードに移行する」