第124章 沈黙の追跡者
日本海。夜の闇が深い。
ロナルド・レーガンのCIC(戦闘情報センター)は、無数のモニターと点滅する光に満ちていた。当直士官たちが、全周からの情報を冷静に分析している。
「ソナーからコンタクト。非識別、潜水艦の可能性」
音響解析官の声に、CICの空気が張り詰めた。モニターの海図上に、小さな光点が点滅する。それは、数時間前にそうりゅうからの通信で示された、日本海側の任務海域だった。
「速度2ノット。深度90メートル。特徴的なプロペラ音、そうりゅう型に酷似」
そうりゅうの存在は、米軍も把握していた。彼らの任務は、そうりゅうとロナルド・レーガン、そしてブレナン大尉の記憶を同期させ、幻影を再出現させることだ。
艦長ハリントンは、モニターの前に立ち、静かに指示を出す。
「ソナーをアクティブに切り替え、位置を特定しろ」
アクティブソナーは、自ら音波を発して潜水艦を探知する強力な手段だ。その音波は、海の底まで響き渡り、沈黙を破る。しかし、それと同時に、潜水艦の位置を相手に知らせてしまうというリスクも伴う。
「……アクティブソナー、発射」
ブザー音が鳴り響き、モニターの光点が閃光を放つ。音波が海中を伝わり、反射波が戻ってくるのを待つ。
「反射波、入感! コンタクトは依然として同じ位置に……」
モニターに映るそうりゅうの光点は、ロナルド・レーガンがアクティブソナーを発射した後も、速度も深度も変えずに、静かに航行を続けていた。
「つまり、そうりゅうはこちらがアクティブソナーを打つよりずっと前に我々の位置を探知していたわけだ」
「追跡を継続!」
CICにハリントンの声が響いた