第119章 「扉」を開けるための実験
横須賀基地から飛び立ったMV-22オスプレイは、夜の海を飛び、ロナルド・レーガン艦上のフライトデッキに着艦した。オスプレイのローター音が止むと同時に、カレン・マイヤーズ博士率いる特別チームが艦橋へと急ぐ。
「ようこそ、博士」
ロナルド・レーガンの艦長が、硬い表情でマイヤーズ博士を出迎えた。彼の背後には、米海軍第七艦隊司令官ハリス中将が立っている。
「単なる次元の歪みではありません。あれは、過去の幻影でした。幻影の出現を制御できれば、歴史的な知見を得られる可能性が生まれます」
マイヤーズ博士は、自身の研究の重要性を訴える。
「我々の目的は、タイムスリップ記憶を持つパイロット、コールサイン“Falcon-12”の記憶をトリガーとして、大和の幻影を意図的に再発生させることです。それが成功すれば、過去にタイムスリップしているままのロナルドレーガンを現代に帰還させることができる」
ハリス中将は、厳しい表情でマイヤーズ博士の言葉を聞いていた。
「残念ながら私の理解を遙かに超えている。しかし完全否定はしない。
問題は実験するにしても、ブレナン大尉の精神的負荷をどう考えるかだ? 彼は前回の干渉でPTSD症状を悪化させている。1945年の撃墜記憶を再び刺激するのは危険だ」
「危険は承知しています」
マイヤーズ博士は短く息を吐いた。
「この実験の戦略的価値は計り知れません。もし、この現象を再現できれば、我々は過去の情報を得られるだけでなく、」
彼はそこで一呼吸おいた
「我々はもしかしたら、過去の戦場に介入し、未来の戦果を操作できる、前例のない扉を開くことになるかもしれない」
ハリス中将は、無言でうなずいた
マイヤーズ博士は即座に命じた。
「全スタッフ、準備態勢へ。医療チーム、認知心理士、それと暗号通信班は医務室へ。」
「私は、ブレナン大尉と直接話します」
マイヤーズ博士は艦長とハリス中将は、黙ってに敬礼を送った。
こうして、ロナルド・レーガン艦上で、歴史を揺るがす壮大な実験が、静かに幕を開けた。