第110章 連携
【大和・艦内】
閉ざされた艦室。天井の蛍光灯が微かに唸りを上げ、壁の時計の秒針が単調に刻む。
野間は、枕元に隠した掌サイズの衛星通信機を引き寄せた。
電源を入れると、微弱なノイズの奥から、低く押し殺した声が聞こえてくる。
『……野間さん、聞こえますか』
大友遙人だった。背後では、エンジンの低音と海面を叩く波の音が混じる。イカ釣り漁船の船室だろう。
『さっき、防衛省から極秘の信号を傍受しました。そうりゅうとロナルド・レーガン、日本海で再び交差させる……“時空干渉”の再現計画です』
野間は思わず息を呑む。
「……証拠は?」
『映像と暗号文書があります。ただし全部は渡せません。条件があります』
大友の声は、波音に混じって一段と低くなる。
『この情報を出す代わりに——あんた、これから大和の行動を全て記録し、俺に送ってください。歴史的証言者として、最後まで密着する。それが条件です』
野間は、わずかに笑った。
大友はいつもそうだ。核心は小出しにして、相手を前のめりにさせる。
「……わかった。だが、まずは断片だけでも寄越せ。こちらも命懸けだ」
『了解。じゃあ——核弾頭の件から話しましょうか』
艦室の空気が、急に冷たく感じられた。