第109章 DAY-15 ブリーフィング
【防衛省・地下第4会議室】
大型スクリーンに、台湾海峡と南西諸島を中心とした衛星写真が投影された。
赤いラインは、中国艦艇の展開ライン。青い点線は台湾側防衛網。そして、日本の南西シーレーンには、自衛隊の哨戒航路が細く描かれている。
統合幕僚監部の情報部長が、低い声で読み上げる。
「中国海軍は、広州造船所でD-Day型上陸バージの量産を確認。現在までに15隻が完成、うち10隻は東南沿岸基地へ移送済み。台湾侵攻における主力上陸プラットフォームと推定されます」
隣のスクリーンが切り替わり、台湾軍の映像が流れる。
都市部でのバリケード構築、民兵の自動小銃訓練、地下壕での物資備蓄——その規模は、すでに「演習」の域を超えていた。
「台湾は漢光演習を延長し、24時間体制の都市防衛を維持中。サイバー部隊も常時警戒態勢に移行しました」
参謀がレーザーポインターで画面を指し示す。
「さらに、中国はロシア海軍と合同巡航を開始。西太平洋でのプレゼンス拡大を図っています。これは台湾有事発生時、米軍増援ルートを牽制する狙いと見られる」
静寂。
会議室の壁掛け時計は、刻々と時間を刻む。
防衛大臣が椅子に深く腰掛け、指先で机を軽く叩いた。
「……つまり15日後には、第一波が動き出すと見ていいな」
誰も否定しなかった。
その沈黙は、全員が同じ現実を見ている証だった。
スクリーンの端に、北朝鮮沿岸の別ウィンドウが開く。
そこには、別の赤い航跡——日本海を北上するそうりゅうの位置が、ゆっくりと点滅していた。
「二正面作戦だ。沖縄も、日本海も……我々が初戦を担う」
その言葉に、部屋の温度がわずかに下がった。
誰も、大和にはこれを伝えていない。