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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン3
465/2200

第102章 ノイズの向こう側



 夜の港。

 貸し切った古びたイカ釣り漁船の船倉で、大友遙人はひとり、膝の上に広げた黒いケースを開けていた。中身は、民生品に見えるが、内部は完全に改造された短波受信機とデジタル信号解析端末だ。


 ヘッドホンに流れ込むのは、耳障りなホワイトノイズ。

 しかし大友は眉一つ動かさない。指先で同調つまみをわずかに回し、もう一方の手で小型キーボードを叩く。


 ——ガガッ……ピッ……ザーッ……。


 ノイズの海に、ほんの一瞬だけ異質なパルスが混ざった。

 その瞬間、彼の瞳が鋭く光る。


「……軍用周波数。横須賀からだ」


 画面には暗号化されたビット列が走り、即座に彼の作った解析ソフトがリアルタイムで復号を始める。

 複数のウィンドウが開き、音声波形とスペクトログラムが並ぶ。

 その片隅に、赤い文字が浮かび上がった。


《OPERATION: GHOST CARRIER — PRIORITY TRANSMISSION》


 大友は、笑みともため息ともつかない息を吐いた。

 その表情は、場末の記者というより、CIAの裏部門で長年耳を鍛えた諜報員のそれに近かった。


「やっぱり……隠してやがったな」


 彼は受信機の出力を録音モードに切り替え、さらにノイズキャンセリングのフィルタを二重にかける。

 ——会話の断片が、海底から浮上する残骸のように、少しずつ聞き取れるようになっていく。

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