第91章 幽霊艦のシルエット
南西諸島南方洋上・原子力空母「ロナルド・レーガン」 艦橋 CIC(戦闘情報センター)
室内は青白いコンソールの光と低周波の電子音で満ちていた。
オペレーターの指がレーダー画面上を滑り、突然、息を呑む。
オペレーター
「新コンタクト——方位097、距離92カイリ、速力15ノット。IFF(識別信号)……なし」
戦術士官
「スクリーン拡大、エンハンス!」
ズームアップされた輪郭は、信じがたいものだった。
艦首から艦尾にかけて、明らかに第二次世界大戦期の戦艦シルエット——
しかし、その上には異様な幾何学的構造物と、前後甲板に整然と並んだVLS発射セル。
旧式の三連装主砲塔の両脇には、滑らかな砲身——レールガン。
司令官(低い声で)
「……大和……なのか?」
通信士が別チャンネルを開く。
「SIGINT(電波情報)で確認、こちらからの呼びかけに応答なし。だが……」
彼はヘッドセットを外し、顔をしかめた。
「……送信波形に、1945年型の日本海軍暗号が混ざってます」
その瞬間、艦橋後部で警報が鳴り響く。
レーダーのコンタクトが一瞬消え、再び出現——今度は数百メートル手前に。
海面に立ち上る波紋が、まるで巨大生物が浮上した跡のように広がっていく。
ハリントン(CICの扉に立ち、蒼白な顔で)
「……あの距離、この後に来るのは……ミサイルだ」
彼の言葉と同時に、艦橋の大型スクリーンに切り替わった光学映像が、黒い艦影の上で一斉に開く発射セルの蓋を映し出す。
司令官は息を呑み、短く命じた。
司令官
「全艦戦闘配置——!」