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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン3
452/2187

第89章 記憶の交差点


南西諸島南方洋上・原子力空母「ロナルド・レーガン」艦内 医務室


窓のない医務室は、船体の振動と低いエンジン音だけが満ちていた。

診察ベッドに腰掛けたジョン・M・ハリントン少佐は、こめかみを押さえ、深く息を吐いた。

脳波モニターの波形が不規則に跳ね、軍医が記録を取りながら視線を上げる。


軍医

「また、あの夢を?」


ハリントン

「夢じゃない……これは、記憶だ」


外では、艦橋からのアナウンスが低く響く。


「Attention all hands — 30 minutes to entry point of designated patrol area.」


その言葉が、耳の奥で奇妙に反響した瞬間、視界が滲み、色が褪せた。


——青空に映える白い航跡。

 プロペラの振動。

 翼下の爆弾の重量。


眼下の海面には、巨大な艦影。

しかし、それは80年前の設計図には存在しないはずの艦首形状だった。


ハリントン(呻くように)

「……いづも? いや……大和……だが、あの艦は……」


記憶の中で、艦の甲板上にずらりと並ぶ四角い発射セルが開く。

轟音もなく、銀色の矢の群れが空を切り裂き、こちらに殺到する。

機体警報が赤く点滅し、仲間の編隊が次々と炎を引き、海へと突っ込む。


そして——自機の左翼が閃光で吹き飛ぶ感触。

キャノピー越しに見た最後の景色は、ミサイルの航跡と、海へ落ちていく空の色だった。


「ハリントン少佐!」

軍医の呼び声で、彼は現実に引き戻された。

額には冷や汗、手は微かに震えている。


軍医

「……症状が悪化している。海域が近づくほど、記憶が明瞭になっているようだ」


ハリントン(低く)

「この海には……時代が混じってる。あれは……俺を二度殺す気だ」


艦橋の作戦卓では、第7艦隊司令官が航跡図を見つめていた。

巡航経路の先、赤で囲まれた楕円——タイムスリップ海域。

その中心には、艦名不明の「大型艦」のシルエットが、最新の偵察衛星画像にぼんやり映っていた。


ハリントンは立ち上がり、固い声で言った。


ハリントン

「司令……あの艦を知ってます。撃たれたのは、俺です」











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