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第78章 「歴史の重荷、燃料の足枷」
場所:東シナ海・《大和》艦橋
呉を出航した《大和》の艦橋は、静かだが張り詰めた空気に包まれていた。有馬艦長と秋月一等海佐は、コンソールに映し出される航路図と、艦の状態を示すデータを凝視している。その横には、仁志兵曹長と西村中尉、そして海上自衛隊の杉浦二佐、甲斐三佐、加藤兵曹長が、それぞれの持ち場で待機していた。
「有馬艦長、航路、異常なし。しかし…燃料の残量が、懸念されます」
秋月一等海佐が、厳しい表情で報告した。
「わかっている。大量の最新装備を詰め込んだことにより、燃料タンクの容量は、元の半分以下となった。機関をボイラー改造で対応したことにより、ある程度の省燃費とはなったが、このままでは、沖縄までは片道燃料分しかない」
有馬艦長は、静かに、しかし重い口調で語った。
「現地での給油が、必須ということですね」
杉浦二佐が、秋月に確認した。
「その通りだ。沖縄沖で、燃料を補給しなければ、我々は、この海域から一歩も動けなくなる」
秋月一等海佐は、深く頷いた。
「80年前に沖縄に特攻した片道燃料の大和と同じだな」
仁志兵曹長が、呟いた。