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第73章 「国難の底辺、届かぬ声」
東京都内、コンビニエンスストア前
東京都内のコンビニエンスストアの前で、アルバイトを終えた大学生が、スマホの画面を見つめていた。画面には、北朝鮮のテロと、それに続く政府の記者会見が流れている。
「マジかよ、原発がテロにあったってよ。マジで日本、ヤバいんじゃね?」
大学生は、友人にメッセージを送った。
「そりゃ、ヤバいって。大和とか言って浮かれてたけど、結局、それがテロを招いたんだろ?政府は、俺たちに嘘ついて、戦争に巻き込むつもりか?」
友人の返信は、怒りを露わにしていた。
「でもさ、もし中国が台湾に攻め込んだら、日本も無関係じゃいられないんじゃね?沖縄もすぐそこだろ?俺たち、どうなるんだよ?」
大学生は、返信する言葉が見つからなかった。彼が恐れているのは、戦争でも、テロでもなかった。戦争が始まれば、非正規雇用の彼は、すぐに職を失う。それは、彼の生活を脅かす、最も現実的な恐怖だった。