第70章 国難の天秤、支配者たちの思惑
東京都内、大手商社役員会議室
都内にある大手商社の役員会議室では、日本の経済を動かす最上位階層の人間たちが、北朝鮮のテロと、それに続く国際情勢の混乱について議論していた。
「政府の対応は甘すぎる。大和の再武装化を公開するなど、愚の骨頂だ。あんなものを見せつけて、国民が喜ぶとでも思っているのか?」
大手銀行の頭取が、苛立ちを隠せずに語った。
「その通りだ。大和の再武装化は、我々にとって、新たなビジネスチャンスをもたらすはずだった。しかし、北朝鮮のテロによって、そのチャンスは一瞬にして消え去った。国民の反戦ムードは、政府の財政再建にも悪影響を及ぼすだろう」
大手商社の社長が、深い溜息をついた。
「我々は、中国とのビジネスを優先すべきだ。台湾問題に干渉することは、我々にとって、大きなリスクとなる。政府は、国民の反戦ムードを尊重し、台湾問題への関与を断念すべきだ」
「しかし、アメリカは、日本の協調的な対応を求めている。この状況で、我々がアメリカの要求を拒否すれば、日米同盟は崩壊し、この国の安全保障は、風前の灯となる」
最上位階層の人間たちは、それぞれの利害と、国家の存亡を天秤にかけていた。彼らは、国民の感情よりも、自分たちのビジネスと、この国の未来を、冷徹なまでに計算していた。