第68章 「軌道上の検証、時の鍵を探して」
ロスアラモス国立研究所・地下コマンドセンター
ロスアラモスの地下コマンドセンター。ホークス博士は、メインスクリーンに映し出されたホログラフィック・ディスプレイを凝視していた。そこには、ロペス博士が導き出した**『時空の量子もつれ仮説』が、複雑な数式と共に表示されている。
「…『共鳴点』は、単なる時空の歪みではない。それは、過去と未来を繋ぐ、量子もつれの特異点だ」
ホークス博士は、ロペス博士の言葉を反芻した。この仮説が正しければ、ロナルド・レーガンを帰還させることは可能となる。しかし、そのためには、この仮説を検証する、新たな観測データが必要だった。
その時、ホークス博士は、壁面のモニターに映し出されたNASAのジョンソン宇宙センターの映像に目を向けた。
「ジョンソン宇宙センターに、緊急プロトコルを発動しろ!TRIDENT NETWORKからの直接要請だ。ISSのクルーに、新たな観測ミッションを要請する。『時空の量子もつれ』の兆候を捉える、新たな観測を依頼する」
彼は、通信機器を手に取ると、ジョンソン宇宙センターのミッションディレクターに、直接、指示を出した。
「ミッションディレクター、ロスアラモスより緊急要請だ。ISSのクルーに、超高感度重力波観測アレイを、指定された座標に向けろ。ロペス博士が導き出した『時空の量子もつれ』の兆候を捉える必要がある」
ホークス博士の声は、冷静だが、その言葉には、この国の未来を賭けた、強い意志が込められていた。
「この観測が成功すれば、我々は、ロナルド・レーガンの帰還を、現実のものとすることができる。そして、時間という宇宙の根源的な法則を、我々の手で解き明かすことができるだろう」
ISSのクルーは、ホークス博士の言葉に、戸惑いを隠せない様子だった。しかし、彼らは、その言葉の持つ重要性を理解し、すぐに観測ミッションを開始した。
この日、ロスアラモスとISSは、時空の謎を解き明かすため、一つになった。彼らの手には、ロナルド・レーガンの帰還と、人類の未来を賭けた、一つの鍵が握られていた。