第64章 「国難の選択、未来への道筋」
場所:総理官邸・記者会見室
「大和」の主砲発射実演の熱狂から一夜が明け、その熱狂は、政府への期待と、国際社会からの圧力という、二つの大きな波となって押し寄せていた。総理官邸の記者会見室は、国内外のメディアで埋め尽くされ、未曾有の緊張感に包まれていた。壇上には、内閣総理大臣が、厳粛な面持ちで立っている。
「…本日の呉港における、戦艦『大和』のデモンストレーションについて、国民の皆様、そして国際社会の皆様にご説明いたします」
総理は、深く息を吸い込み、語り始めた。
「昨夜、我々が直面した北朝鮮によるテロ、そして中国の台湾侵攻という、二つの深刻な国難に対し、政府は、国民の皆様の真の理解を求めてまいりました。その結果として、本日、『大和』の持つ、専守防衛に徹するための力を、皆様に公開させていただきました」
総理の言葉に、記者たちは一斉にペンを走らせる。
「『大和』に搭載された、レールガン、レーザー砲、そして自律型ドローンシステムは、決して他国への侵略を意図したものではありません。
それは、我が国の国土、領海、そして国民の生命を守るための、専守防衛のための兵器です。これは、平和憲法のもと、我々が持つべき、自衛のための最小限の力です」
総理は、カメラをまっすぐ見据え、強い口調で語った。
「また、この技術は、決して特定の国を敵に回すためのものではありません。我々は、この技術を、国際社会の平和と安定のために、最大限に活用してまいります。日米同盟、そして国際社会との連携を強化し、アジア太平洋地域の平和を、我々自身の手で守り抜く決意です」
その言葉は、記者会見室に大きな衝撃を与えた。
「そして、最後に…」
総理は、一瞬の沈黙の後、核心的な発表を行った。
「政府は、この国難を乗り越えるため、戦艦『大和』と、海上自衛隊の艦隊を、沖縄近海に前進展開させることを決定いたしました。
これは、台湾有事の際、中国軍が南西諸島へ侵攻する事態を未然に防ぐための、最後の防衛線です。この決断は、国民の皆様に、大きな不安を与えることとなるでしょう。しかし、これは、国民の生命と財産、そしてこの国の未来を守るための、苦渋の選択です」
記者会見室に、深い静寂が訪れる。
総理は、深々と頭を下げた。
「国民の皆様のご理解とご協力をお願いいたします」
総理の記者会見は、国民の間に、期待と不安、そして恐怖が入り混じった、複雑な感情の渦を巻き起こした。そして、それは、日本が、再び、歴史の岐路に立たされたことを意味して