第59章 漆黒の下の準備
場所:呉・第1艦隊基地/大和ドーム内部
内部は、外から想像できないほどの熱気に包まれていた。 クレーンのワイヤーが軋む金属音、微妙な衝撃音、電子機器のテスト隣接境界、まるで巨大な心臓が鼓動を刻んでいるかのようだった。
副砲座跡地には、まだ試作段階を終えた量産型レールガンが鎮座している。 砲身は従来の艦砲よりも長いが、内部の超伝導コイルが出る微かな電磁ノイズが、作業員の髪を逆に 見る 。
高角砲跡には、当初初配備となる短波レーザー砲が仮設マウントに取り付けられていた。 カバー越しにも、光系統の複雑な反射構造がわかる。
CIWSの位置では、無人ドローンを管制する新型警戒防御兵器のポッドが設置されつつある。シーウス改良型と呼ばれるこの軍事は、ドーム内の別室に収容されたドローン母機とリンクし、必要に応じて甲板上から自動離陸する仕様だ。
艦橋では、旧式レーダー解放後の空白をそのままに、フェーズドアレーレーダーの平面アンテナ群が組み立てられ、その裏では最新型の高速情報処理システムが配線されてい た 。
そして、甲板脇の塗装ブースでは——異様な光景があった。
照明を反射しない特殊塗料が、分厚いスプレーガンから静かに吹き付けられていく。近くで見ても、艦の輪郭が消えてしまうような光吸収率。
作業員たちが塗料のコードネームを知っていたが、口にはしなかった。機密資料の 最上位に分類される「ステルス塗料」——視界光だけでなく、一部のレーダー波も吸収する特殊コーティング。
「改装ステージ3、予定より2日短縮
白石は一瞬だけ天井を仰いだ。この艦が外に出るとき、国民は必ず——息を呑む。