第48章 信頼の裏切り
米第7艦隊司令官は、淡々と続けた。
「我々は、日本の世論が反戦ムードに傾き、迅速な報復が困難であることを理解していました。しかし、我々は、同盟国としての日本の安全を守るため、そして、米国の安全保障を守るために、この決断を下しました。これは、同盟の真価を問う、避けられない選択だった」
「北朝鮮の声明は、明らかに『大和』の再武装化を非難し、国民の反発を煽ることを目的としています」
日本の防衛大臣が、厳しい表情で応じた。
「政府の最新の世論調査では、大和の再武装化反対と、台湾問題への関与反対が、圧倒的多数を占めています。この状況で、我々がさらなる米国との共同報復に踏み切れば、国民の不信感は決定的なものとなり、内閣が崩壊する可能性すらあります」
「我々は…貴国を信じて、この会議に臨みました。国民の感情と、この国の未来を賭けて、難しい選択を迫られている最中でした。しかし、貴国は、我々が下すはずだった決断を、独断で実行した。これは、同盟という名の、信頼の裏切りです」
その言葉に、会議室の空気が一変した。それは、同盟の論理よりも、国内政治の安定を優先する日本の苦渋の決断だった。
「…それは、同盟国としての責任を放棄する、ということですか?」米第7艦隊司令官の声に、怒りが滲む。
日本の外務大臣が、冷静に答えた。
「これは、責任の放棄ではありません。今回のテロは、単なる軍事行動ではなく、日本の社会を分断させることを目的とした、巧妙な代理戦争です。我々がこの挑発に乗れば、北朝鮮の狙い通り、国内は分裂し、日米同盟は内側から崩壊するでしょう」