第45章 ロナルド・レーガン帰還、そして時空の鍵
その時、一人の科学顧問が、大統領に進み出た。
「大統領、北朝鮮のテロは、我々のOPERATION: GHOST CARRIER、すなわちロナルド・レーガンの帰還計画に、新たな脅威をもたらしました」
「どういうことだ?」
「テロによって、日本の世論は反転し、政府は『大和』の再武装化計画を国民に説明せざるを得なくなりました。これにより、我々が計画を進めてきた、『大和』の技術協力が、政治的に困難になる可能性が出てきました」
大統領は、厳しい表情になった。
「しかし、TRIDENT NETWORKの解析は、ロナルド・レーガンの帰還には、『大和』の再武装化に使われた革新的レーダー技術分野の解析技術が不可欠であることを示している。これらの技術がなければ、帰還シークエンスの成功率は、限りなくゼロに近くなる」
科学顧問は、さらに続けた。
「そして、ロナルド・レーガンの帰還計画は、単なる軍事作戦ではありません。それは、我々が時空転移事象(JSC-Ω)の全容を解明するための、最初で最後の機会です。ロナルド・レーガンから回収されたブラックボックスデータは、時空連続体の位相を解析する上で、極めて重要な鍵となる。この情報を失えば、我々は、時間という宇宙の根源的な法則を掌握する、絶好の機会を失うことになります」
大統領は、ゆっくりと顔を上げた。北朝鮮のテロは、単なる軍事的な脅威ではなかった。それは、日米の戦略を分断し、世界の覇権を左右する「時の扉」を閉ざそうとする、巧妙な一手だったのだ。
「日本政府に、直ちに連絡を取れ。北朝鮮への報復と、ロナルド・レーガンの帰還作戦、そして『大和』の技術協力について、緊急協議を要請する。このテロは、我々にとって、新たな戦争の始まりだ。」