第44章 「超大国の静かなる応酬、そして時空の鍵」
場所:ワシントンD.C.、ホワイトハウス・シチュエーションルーム
夜明けの日本とは対照的に、ワシントンの朝は始まったばかりだった。シチュエーションルームは、北朝鮮のテロと声明の報を受け、緊迫した空気に包まれている。大型モニターには、原子力発電所のステータスと、日本の官房長官記者会見の様子が映し出されていた。
「テロは、日本の社会を完璧に分断した。我々の最重要同盟国は、いま、内部分裂の危機に直面している」
国家安全保障担当補佐官が、厳しい表情で分析した。
「北朝鮮の狙いは、日本の世論を動かし、台湾問題への関与を断念させること。そして、声明の中で中国との連携を示唆した。これは、中国が日本への直接的な圧力を避けるための、巧妙な代理戦争だ」
大統領は、沈黙を保ったまま、日本の記者会見の映像を見つめていた。
「日本政府は、声明の裏にある中国の意図を把握し、慎重な対応を呼びかけている。我々は、この状況を冷静に分析し、日本に協調的な対応を促す必要がある」
その言葉に、国防長官が口を開いた。
「しかし、大統領。北朝鮮が、日本のインフラにテロを仕掛けた事実は、見過ごすことはできません。このままでは、北朝鮮の行動をエスカレートさせることになります」
大統領は、ゆっくりと顔を上げた。
「我々は、北朝鮮への軍事報復を行う。だが、それは、中国が介入する口実を与えない形でなければならない。そして、日本政府に対し、国民の反発を押し切り、我々との連携を強化するよう強く求める。この国難の時こそ、同盟の真価が問われる」