第42章 「官邸の夜明け、混乱と決意」
場所:総理官邸地下危機管理センター
夜が明け始めた官邸の地下は、鉛のように重い静寂に包まれていた。中央の大型モニターには、原子力発電所のステータスと、平壌の放送局が映し出され、その横には、北朝鮮の声明全文が赤字で強調されている。総理を筆頭に、閣僚たちが円卓を囲み、それぞれの顔には疲労と焦燥が色濃く浮かんでいた。
「原発の非常用冷却装置は、自衛隊の特殊部隊が現地で手動による起動を試みています。しかし、成功の確率は五分五分です」
防衛大臣の報告に、総理は深く頷いた。
「北朝鮮の声明は、明らかに『大和』の再武装化と、台湾問題への関与を牽制するためのものだ。しかし、このテロが、国内世論を一気に反転させるとは…」
総理は、拳を握りしめた。官邸に届いた最新の世論調査では、大和の再武装化反対と台湾問題への介入反対が、圧倒的多数を占めていた。このままでは、政府は有効な対抗策を打ち出せない。
その時、一人の秘書官が、慌ただしく部屋に入ってきた。
「総理、官房長官が、記者会見を始めました。…事前に調整された内容とは違うようです」
総理と閣僚たちは、顔を見合わせ、モニターを記者会見のライブ映像に切り替えた。