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第40章 呉港、怒りの奔流
場所:呉港・旧海軍工廠ゲート前
その頃、呉港の旧海軍工廠ゲート前は、未曾有の熱気に包まれていた。早朝からのニュースを受け、日本各地から集まった数千人規模のデモ隊が、ゲートを埋め尽くしている。彼らは、手作りのプラカードを掲げ、拡声器を通して怒りの声を上げていた。
「大和を動かすな!」
「テロを招いた政府は辞任しろ!」
「台湾問題に関わるな!」
デモ隊の怒声は、呉港の空に響き渡り、警備にあたる警察官や機動隊の部隊と、一触即発の事態となっていた。彼らの怒りは、北朝鮮のテロと、それに乗じた政府への不信感、そして「大和」という過去の象徴を再武装させたことへの恐怖から生じていた。
デモ隊の中には、若い世代だけでなく、年配の夫婦や、幼い子供を連れた親の姿も見られた。彼らにとって、戦争は歴史の教科書の中の出来事だった。しかし、今回のテロ事件は、その平和な日常を根底から揺るがし、彼らを街頭へと駆り立てていた。