第28章 OPERATION: GHOST CARRIER 始動
横須賀基地・統合特殊対策会議室(J-SCAR)
横須賀基地の会議室は、ロナルド・レーガンの帰還作戦について議論する日米の専門家たちで埋まっていた。スクリーンには、大和から得られた時空データが映し出され、その解析結果は、タイムスリップが再現可能な物理現象であることを明確に示していた。しかし、部屋に漂う空気は、確信とともに、新たな戸惑いと緊張感に満ちていた。
米国家安全保障担当補佐官(NSA)が、静かに口を開いた。 「我々の乗員は、沖縄沖で発生した時空の歪み、すなわち『共鳴点』に、偶然にも、艦が配置されたことで1945年の時空へとタイムスリップした。この現象の科学的解明こそが、ロナルド・レーガン帰還計画の核となると考えます。」
DARPA長官が、プロジェクターのスイッチを入れた。スクリーンには、TRIDENT NETWORKによる最新の時空間データ解析結果が、3Dグラフィックで表示される。
「TRIDENT NETWORKは、《大和》の帰還プロセスを再構築しました。
特異点事象の再発生: 沖縄沖の座標で、時空の位相とエネルギー密度が、極めて高い精度で再び集中しました。これは、時空連続体が自身の歪みを修復しようとする『共鳴現象』と見られています。
特異点への偶発的突入: 《大和》は、呉から沖縄沖へ向かう途中で、この共鳴点が最大に達するわずか18秒間のウィンドウに、偶然にも突入しました。
時空連続体からの再接続: 共鳴点のエネルギーが収束する際、艦体はあたかも元の時空の『慣性系』に引き寄せられるかのように、物理的に再接続されました。これは、時空の歪みによる『弾性回復』に近しい現象と推測されます。」
DARPA長官は、結論を述べた。「この分析は、時空転移が再現可能な物理現象であり、再現可能な『物理的な帰還方法』が存在することを示しています。しかし、その方法はまだ未定です。」
米第7艦隊司令官代理が、表情を引き締めて発言した。 ロナルド・レーガンの帰還には、解決すべき課題が山積している。空母の質量と慣性モーメントを、制御するのは、物理的に不可能だ。したがって、我々は『強制的な慣性制御』を確立する必要がある。」
LANLの科学顧問が、冷静な口調で提案した。 「帰還シークエンスは、TRIDENT NETWORKが時空の位相整合を確立したわずか18秒間のウィンドウ内で実行される。これは、ロナルド・レーガンを現在へ帰還させるための、最初にして最後のチャンスだ。」