第25章 時間を制した者が未来を制す
NSAは、一度言葉を区切ると、部屋にいる全員の顔を鋭く見渡した。
「しかし、《大和》は優先度の二番目だ。一番は、ロナルド・レーガンの帰還と、時空転移事象(JSC-Ω)の科学的解析だ」
室内が静まり返る。
「沖縄沖で発生したあの現象は、《大和》と《まや》、そして《ロナルド・レーガン》の時空連続体における因果律の特異点を形成し、一時的に同じ時空間に存在させた。これを再現可能にした国家が、世界の覇権を握る。それは、核抑止よりも強力な『時間抑止』**になる」
「すでに《ロナルド・レーガン》艦内から回収した時空位置データ(Spacetime Locational Data)は、カリフォルニア工科大学のIQIM(量子情報・物質研究所)の暗号化サーバーに移送済みだ。だが、本格的な解析には、国家レベルの量子計算環境が必要となる。NIFC-CAや極超音速迎撃研究よりも、この研究を優先順位の最上位に置くべきだろう」
その言葉に、部屋にいた軍関係者や科学者たちは、誰も反論しなかった。彼らが直面しているのは、単なる軍事技術の優位性ではなく、時間という宇宙の根源的な法則を掌握する、新たな時代の幕開けだった。
会議の終わり、大統領が低い声で締めくくった。
「時間を制した者が未来を制す。その座を、他国に譲るつもりはない」