第22章 印刷所の巨大な輪転機
夜が明けきらない早朝。印刷所の巨大な輪転機が、轟音を響かせながら高速で回り続けていた。インクの匂いが充満する中、野間は編集長と共に、出来上がったばかりの雑誌の束を手に取った。
表紙には、はっきりと「独占スクープ! 戦艦大和、復活の真実」と大見出しが躍っている。その下には、野間が呉港で命を賭して撮影した写真が掲載されていた。闇夜に浮かび上がる《大和》のシルエット。その艦橋には、不気味に光るドーム状のセンサーブロックが取り付けられているのがはっきりと見て取れる。通常の復元艦にはあり得ない、紛れもない「兵器」の姿だった。
ページをめくると、白井一等海尉のインタビュー記事が続く。彼は匿名での取材に応じたが、その言葉には隠しきれない緊張と使命感がにじみ出ていた。
「…あれは、もはや過去の遺物ではない。あれは、設計者の意思を継ぎ、未来へ向かう『意志を持った艦』なのだ」
そして、野間自身の分析記事が続く。取材メモと、極秘会議の議事録で得た情報を照合し、「展示」という名目で進められた「兵装再配置」と、その裏で進行していた「艦訓練プログラム D-47」の全貌を暴いていた。
編集長は、満足げに微笑んだ。
編集長
「すごいぞ、野間。これは、ただのスクープじゃない。歴史を変える記事だ」
野間は、手にした雑誌の表紙をじっと見つめていた。仁科審議官の冷たい視線が脳裏に蘇る。彼の警告を無視して、ついにこの真実を世間に放つ時が来たのだ。