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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン3
382/2187

第19章 「密室の同調圧力」

官邸の嵐

民主改革党・党本部/政策戦略委員会 非公式勉強会


薄曇りの午後、永田町の裏手にある古びた別館ビルの一室。

そこに集まっていたのは、現政権主張「民主改革党」の中堅~若手議員名。


会議名は「安全保障環境の見直しに関する検討会」だったが、現状は多様だった。


この場における最大の焦点は——


『《大和》艦の「再軍事化」を巡る情報非公開と、総理官邸の強権的運用』


だった。


テーブルの端に座る、二期の石神敬介が口火を切った。


「俺たち、知られてないよね。『展示艦』と名乗って横須賀に置いてあった《大和》が、数日前、未明に呉まで移送された。 ついでに、民間防衛企業、電子戦研究所、海保、果ては米軍技術顧問まで呉れてる……」


ざわつく議員たちの間を、石神の議論が泳いだ。


「どう見ても、あれは『戦略的再構成』です。それ

を官邸は、議員にも国会にも説明していない。

——国会軽視、民主主義の破壊ですよ」


誰かがうなずき、誰かが顔を伏せた。


その中に一人、旧主流派の小野田政務調査副会長が、やや抑えた声で応じた。


「本件は、官邸の『政軍統合モデル構想』の意見と聞いている。

民間技術を用いた「非正規防衛資産」として《大和》を再稼働させ、尖閣・宮古ラインの防衛網を強化するのが定着だと……」


「それではさら、党に事前説明が必要だったはずだ」

石神が食い下がった。


「総理は『国会を経ずとも、政令や防衛大綱の範囲内で対応可能』と言えようが、それは制度の空白を突いた脱法行為だ。

軍艦の復元なんて、どう考えても国民合意が必要な案件じゃないか!」


——この瞬間、空気が変わった。


中堅議員の一人がぽつりと言った。


「……君は、《大和》の艦内に知ってるのか?」


「え?」


「俺は呉で視察した。あの艦、主砲も魚雷発射管も復元されてる。ただの復元じゃない。砲身の素材、滑腔加工、全て最新式。

中枢にはAI戦闘管制中枢《ARGOS》が積まれていた。

あれは——無人艦隊の母艦だ。一応、日本が“持ってはいけないもの”を積んでる」


沈黙。


「……持ってはいけない?」と石神。


「《抑圧戦略停止型軍事》。……つもり、極超音速滑空弾の改良試験体。

それが、あの艦尾の艦尾VLSに収まってた。俺は見た。……いや、見せられたんだ。わざわざな」


誰かが「まさか」と呟く。


その空気を遮るように、議員のひとりがポツリと言った。


「君たちさ、知ってないフリをしてるだけだよ」


「だ?」


「今、日本は『非対称戦争』の始まりにいる。

米中の睨み合いの中で、あの艦が『日本の意思』として海に浮かんでるってことは——

外交的に、日本が核抑止論の前段階に足を踏み入れたってことだ。

総理は、それを自分の手でやりたかった。それでだよ」


沈黙が再び満ちた。


闘い、石神が唇を引き結ぶ。


「……総理を信じたい。でも、『同じ船』に乗ってるつもりはない」

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