第15章 1945年の新世界線がここからはじまる
漆黒の空母は、まるで深海の生物のように、沖縄の澄んだ海に静かに浮かんでいた。だが、その甲板には生命の気配がない。乗員は一人残らず、別の艦に移送されていた。残されたのは、遠隔操作で監視される巨大な鉄の塊だけだ。
ハワード大佐(双眼鏡で艦を眺めながら) 「あの艦の原子炉は、まだ生きているのか?」
通信士官(無線機を耳にあてながら) 「イエス、サー。内部データによると、まだ臨界を維持しています。しかし…」
ハワード大佐 「しかし、何だ?」
通信士官 「艦体には…すでに核兵器がセットされています。もし、彼ら日本軍の指示に反して艦が動けば、即座に自爆処理を行うと通知されています」
核の心臓を持つ空母は、自らが核爆弾となって、過去の海に「係留」されていたのだ。
ロナルドレーガン自体は今は利用できない。しかし、未来の乗員の知識は利用できる
コンクリートに囲まれた特別会議室
ロナルド・レーガンの乗員たちは、英雄として本土に迎え入れられた。特に、原子炉機関の運転技術者たちは、未来の核技術を過去に伝えるための重要な役割を担っていた。彼らは隔離されたのではなく、米軍の最も優秀な技術者たちとの共同研究のために、特別施設に集められていたのだ。
技術共有責任者 「グリッグス中佐。我々は、あなた方の技術を『平和利用』へと転換する道を探しています。そして、その核心となるのが、あなた方の原子炉技術です」
グリッグス(真剣な表情で) 「承知しました。我々の原子炉は、単なる動力炉ではありません。それは、核分裂のプロセスを安全に制御し、莫大なエネルギーを生み出す、人類の未来を形作る技術です」
ロナルド・レーガンの機関士官たちは、未来の技術を危険視され、他の乗員から引き離されて隔離された。その中でも、特に理論物理学に精通していたグリッグスは、最も重要な「鍵」と見なされていた。彼だけが、他の仲間とは別の場所へと移送されることになったのだ。
移送責任者(グリッグスをじっと見つめながら) 「君は…理論物理学の素養が、他の者よりずば抜けている。どういうことだ?」
グリッグス(静かに) 「空母の原子炉は、単なる動力炉ではありません。それは、核分裂のプロセスを理解し、制御する、生き物のような存在です。理論を知らなければ、最適な運転は不可能です」
移送責任者 「…なるほど。君はただの『運転士』ではなかったわけだ」
ハワード大佐(通信越しに) 「君は協力者だ。だが、我々は君たちの技術を恐れている。この状況を理解してほしい」
グリッグス(静かに) 「理解しています。私たちは、あなた方の世界を変える力を持っています。だからこそ、その力は、あなた方の手の中になければならない。…たとえそれが、私たち自身を縛る枷となっても」
ハワード大佐(通信越しに) 「君にいってもらいたいところがある。」