第13章 1945年7月 米軍、ロナルドレーガン沖縄沖合で停船(回想シーン)
1945年7月 米軍、rロナルドレーガン沖縄沖合で停船(回想シーン)
艦橋のスピーカーから、そうりゅう艦長の冷徹な声が響き渡る。 「ロナルド・レーガン艦長に告げる。我々の要求は変わらない。沖縄への攻撃を即時中止し、原子炉を直ちに停止せよ。先の魚雷は貴艦を航行不能にするための警告だ。次に発射される魚雷は、貴艦の心臓部、原子炉を直接狙う。そして、貴官らは、その魚雷の弾頭起爆コードを我々は知らないはずだと思っているだろう」
そうりゅう艦長の言葉は、ウェルズ艦長の顔から血の気を完全に引かせた。彼の艦に装填されている兵器の起爆コードは、最高機密中の最高機密。ウェルズ自身ですら、直接知ることはない。それは、厳重に管理されたシステムの中にあり、今回の特別軍事訓練では絶対に海自側には知らされていない超極秘情報だ。「そうりゅう」が知り得るはずがない?
そうりゅう艦長の声が、再びスピーカーから響き渡った。その声は、冷徹な確信に満ちていた。 「ロナルド・レーガン艦長。当艦のMk-48魚雷(ADCAP MOD 7)の核弾頭起爆コードは、『DELTA-7-FOXTROT-ZERO-SIX-TWO-FIVE-NOVEMBER』だ。確認せよ」
そうりゅう艦長が告げたその文字列に、ウェルズは目を見開いた。そのコードは、彼自身の頭の中にあるはずのない、しかし、彼の艦の兵器管制システムの中に確実に存在する、極秘の起爆コードだった。
「馬鹿な…!」ウェルズは、震える手で通信士に命じた。「直ちに、兵器管制システムにアクセス! Mk-48魚雷の現在の起爆コードと照合しろ!最優先だ!」
通信士は、顔面蒼白になりながらも、指示に従った。艦橋のディスプレイに、厳重なセキュリティプロトコルを解除する画面が映し出される。アクセス権限を持つ数名の将校しか知り得ないパスコードが入力され、幾重にもロックされたシステムがゆっくりと開かれていく。
数秒後、通信士の声が震えた。「艦長…一致します…!現在、Mk-48魚雷にセットされている起爆コードと、そうりゅう艦長が告げたコードが、完全に…一致しています!」
ウェルズは、その報告に愕然として立ち尽くした。脳が、その事実を処理しきれない。この時点で、ウェルズはもはや、そうりゅうが何でもし得ると確信した。
彼は、震える声でスプルーアンス大将に振り向いた。その顔は、恐怖と絶望で歪んでいた。 「大将…彼らは、我々のMk-48魚雷の起爆コードを知っています…!完全に一致しました…」ウェルズは、かろうじて言葉を絞り出した。
「そして…大将…彼らが次に使うと脅しているのは、通常弾頭ではない、と…」ウェルズは、視線をスピーカーに戻し、そうりゅう艦長の声が持つ、恐るべき真実を悟った。