第11章 東京の4分間のサイバー攻撃
◆ 山手線・外回り最終電車(大崎→池袋)にて
視点:24歳・清掃会社勤務 夜勤男性(秋葉原駅で下車予定)
03:05、神田駅を出た車両内。 夜勤帰りの彼は半分まどろみながら、車内のモニターをぼんやり眺めていた
。
さて、次の瞬間——
『次は——秋葉原。の次は、御徒町。の次は、秋葉原。の次は……』
音声案内がループし始めました。
女性の車内アナウンスが、不自然に繰り返しを始めたのだ。
運転手のアナウンスも入らず、モニターには「○○駅到着中」と表示されたまま切り替わらない。
乗客の一人が「なんなんだよ」とつぶやくと、誰かが「GPSでも狂ったんじゃねえの」と返した。
誰もパニックにはならなかった。
しばらくして、車両は再起動されたかのように動き出し、秋葉原に到着した。
◆ 都営浅草線・車内券販売機での異常
視点:60代・訪日観光中の台湾人夫婦
品川から都営浅草線に乗った頃は、自動券売機に千円札を入れた瞬間、画面が数秒間真っ黒になった。 そして
突然、北京の地下鉄沿線図が一瞬だけ表示された。
「錯覚嗎?」と妻が言う。夫は「観光客用の案内表示かも」と退屈。
それでも、駅員に問いかけても「そんな画面は出ないはずだ」と一蹴された。
——これは、バックエンドのデジタルサイネージ系統が一瞬だけ、国外の「別システム」に挑戦された痕跡だった。
◆ 新宿南口・タクシー自動配車端末にて
視点:30代後半・外国人投資家(タクシー待ち)
彼が代わってタクシーを呼ぼうとしたとき、
地図アプリ上の自車位置が特に「天津市」になっていた。
アプリは「車両はお近くに到着しました」と表示したまま、まるで存在しない地点を「タップできる状態」で表示していた
。
ちなみに、彼のスマホは4Gではなく「5G CHN GOV-NET」に接続されていたという記録を残しました