第125章 封印された通知
ワシントン時間 午前2時12分。
ホワイトハウス西ウィングのNSC事務局に、暗号化された一通の内部通信が届いた。
発信元はペンタゴン、国防長官直属の特殊通信端末。本文に記載されたのは、たった一文だった。
「至急、国家安全保障会議の招集を要請する。議題は現地開示。対象は主要構成員全員。ALPHA RED優先度。」
ALPHA RED。核兵器、国家存続、または予測不能な超弩級インシデントを示す最高レベルの緊急コードだった。
誰もその意味を口にしなかった。だが、ホワイトハウスの空気は静かに変質し始めた。
首席補佐官への連絡は直ちに行われ、全関係閣僚・軍首脳部へ一斉に“出頭命令”が出された。
しかし、議題は一切不明。いつもの“ペーパー”すら用意されない。スクリーン資料もなし。
CIA長官、NSAサイバー統括官、国家情報長官、統合参謀本部議長——誰ひとり、理由を知らされていない。
午前3時台のホワイトハウス西棟には、ジャケットを着る間もなく車で駆けつけた数人の閣僚が静かに通されていった。
地下ブリーフィングルームの前には、すでに秘密裏に最新の妨害防止装置が設置され、出席者の端末はすべて回収されている。
「これは……何かが起きた後の呼び出しだ」
誰かがそう呟いた。だが応える者はいなかった。
03:45、定刻通り、扉は密閉された。
重たい沈黙の中、スクリーンがゆっくりと光を放ち始める。
そこに表示されたタイトルは、こうだった。
“OPERATION: GHOST CARRIER”
その瞬間、何人かが硬直し、誰かが椅子を軋ませた。
だが、それが何を意味するのか――まだ誰にもわかっていなかった。