第123章 報道の熱が冷めていく
東京都心のカフェのテレビでは、海外ニュース専門チャンネルが流れていた。
画面には、神奈川・横須賀港に停泊する灰色の巨艦——戦艦大和。
甲板には観光客の列、売店ではグッズを手に笑う来場者たち。
字幕にはこう出ていた。
BBC: “Japan’s Full-Scale ‘Yamato’ Museum Draws Crowds, Raises Eyebrows Amid Taiwan Tensions”
スタジオのキャスターが淡々と読み上げる。
「台湾海峡の軍事的緊張が高まる中、日本では“戦艦大和”を再現したという実物大艦が話題を集めています。
一部の専門家は、これが第二次大戦の艦そのものであり、現代にタイムスリップしてきたと主張していますが——」
映像が切り替わり、ワシントン・ポスト電子版の記事見出しが映る。
“Time Travel or Tourism? Japan’s Yamato Turns into a Seaside Attraction”
米国防総省筋の匿名コメントが引用される。
「同盟国としての能力は信頼している。しかし、この時期に艦をミュージアム化する優先度には疑問を感じざるを得ない」
一方、日本国内でも潮目は変わりつつあった。
かつて大和の現代出現を連日報じていた民放ワイドショーは、今や別の話題に時間を割き、
ニュースでは「来館者数○万人突破」という観光指標の数字ばかりが強調される。
SNSでは、
「結局は観光船でしょ?」
「タイムスリップって設定もう飽きた」
という冷笑的なコメントが目立ち始めていた。
ロンドンの国際安全保障シンクタンク所長は、CNNの取材にこう答えていた。
「国際的な危機が迫る中で、このような“歴史的艦船観光”に注力する姿勢は、戦略的シグナルとして誤解を招きかねません。
仮にタイムスリップが事実であっても、それを博物館の陳列品のように扱えば、同盟国の危機認識に疑問符が付くでしょう」
港の一般公開エリアでは、潮風の中でアイスを食べる子供たちの声が響く。
その背後では、装飾用に吊られた信号旗がはためき、かつての戦闘艦は、すっかり「港の風景」と化していた。
海外メディアの冷ややかな論調は、日本の防衛政策そのものにも、静かに影を落とし始めていた。そろそろ真剣に明らかにすべきときがきたのか タイムスリップは現実だと