表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
354/2290

第119章 遺体安置室の報告(D-116)


防衛省地下B-7会議室。

分厚い防音扉が閉じられ、外界の音は完全に遮断されていた。

楕円形のテーブルの上には、いつもの定例報告書の束が置かれているが、そのうち一枚だけ、赤い「機密」印が押されている。


海幕人事教育部・医務官がその一枚を取り上げ、淡々と読み上げ始めた。


医務官

「大和艦内遺体安置室で保管していた遺体のうち、1体について異常が判明しました。

 防衛大学校医学部の法医学チームによる一次鑑定の結果——明らかに日本人ではない、白人系の成人男性です」


その瞬間、室内に微かな緊張が走る。

資料のページをめくる音すら途切れた。


医務官

「推定年齢は30代前半。身長は182センチ、体重は生前で約84キロと推測。

 筋肉量が多く、体脂肪率は低いことから、定期的な高負荷トレーニングを行っていたと考えられます。

 死因は胸部への鈍的外傷と、複数の裂傷による失血。損傷の程度は激しく、顔面の形状識別は不可能です」


テーブル端のスクリーンが切り替わり、遺体の着衣の部分拡大写真が表示される。

オリーブグリーンとグレーのパネルが組み合わされた耐火素材のフライトスーツ——両肩には現代型のベルクロ式パッチベースが縫い付けられていたが、部隊章や階級章は剥がされている。


医務官

「最大の特異点は着衣です。

 第二次世界大戦期の米海軍飛行服ではなく、現行のアメリカ海軍航空部隊仕様のCWU-27/P耐火フライトスーツ、改良型です。

 縫製糸やタグの素材分析からも製造は過去15年以内。昭和20年の時間軸には存在し得ない装備です」


統幕情報部参事官

「……現代の米海軍? つまり、この遺体はタイムスリップ由来ということか」


医務官

「損傷が激しいため、認識票、個人名、部隊コードは特定できず。

 血液型はO型Rh+、DNAは採取済みですが、防衛大学の設備では国際データベース照合が不可能です。

 順天堂大学に移送し、米側の協力を得て詳細鑑定を行う予定です」


スクリーンが消えると、会議室は静まり返った。

この遺体がなぜ、昭和20年の大和艦内安置室に存在し、現代まで戻ってきたのか——




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ