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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
348/2290

第113章 横須賀港・大和艦上(D-115 夜)


港の夜は冷え込み、波間に浮かぶ艦影の灯が揺れていた。

森下耕作は桟橋を渡り、改装作業中の大和の舷側からタラップを上がる。

デッキでは、有馬幸作艦長が海を背に立ち、煙草の煙を夜空に流していた。


有馬

「遅かったな。港町の酒でも引っかけてきたか?」


森下(少し間を置いて)

「……墓参りに行ってきました。自分の墓へ」


有馬は煙草を落とし、火を靴で消す。

「そうか。名前は、そこにあったか」


森下

「ええ、昭和二十年四月七日。沖縄沖で戦死と」


二人の間にしばらく沈黙が流れる。

港の向こうで、造船所のクレーンがゆっくりと旋回している音が響く。


有馬

「……同じ海を、また戦いの色に染めることになるかもしれん」


森下

「止められる気はしません。だが、今回は——沈まぬために動く」


有馬は小さく頷き、暗い海を見つめた。

「我々は、生きて戻るために艦を動かす。

 死ぬために舵を取るのは、あの日で終わりだ」


港の空気が一段と冷たくなり、二人の息が白く夜気に溶けていった。

遠く、第一列島線の向こうから吹く風が、微かに潮の匂いを運んでいた。

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