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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン23

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第41章《作戦ブリーフィング:F-16は“どう戦場に入るのか”》



(新寺子屋・戦史講義ホール)


巨大スクリーンに、黒海・ドニエプル川・アゾフ海・ヘルソン・ザポリージャ・ドネツクの地図が映る。


南條

「さて。今日から二章構成で“F-16とロシア防空網の実戦シミュレーション”をやる。

まず第1章は、作戦ブリーフィング編だ。」


野田

「いよいよ……“戦場に入るF-16”ですね……」


富沢

「映画の前半の、軍幹部が集まるブリーフィングみたいな雰囲気だね」


亀田

「こわいわよ。戦場マップを見るだけで胃がキュッとする」


南條

「その緊張感が現実の戦場である。

しかも――

F-16は“最も危険な空域”に投入される。

まずそこから説明する。」


■1. ロシア防空網の“多層構造”:F-16の前に立ちはだかる壁


南條

「スクリーンを見てくれ。」


地図上に、3つの巨大な同心円が描かれる。


① 外周:A-50Uの広域監視圏(最大600km)

② 中間:MiG-31BMのR-37M長射程CAP(最大300km)

③ 内殻:S-400/S-300の多層防空(150〜400km)


南條

「ウクライナのF-16は、この“3つの殻”を破って侵入しなければならない。」


重松

「なんかもう、RPGのラストダンジョンみたいな重ね方ですね……」


橋本副部長

「最初から“最強ボスの巣”みたいな感じですよね」


南條

「その例えは正しい。

ただし現実にはボスは“3体”いる。」


■2. 第1の脅威:A-50U早期警戒管制機


南條

「A-50UはロシアのAWACSだ。

最大600kmの探知範囲。F-16が飛び立った瞬間に“気配”を捉える。」


野田

「600km……? 日本から東京湾にF-16が飛んだのが九州から見える、みたいな距離……」


南條

「そうだ。しかもA-50Uは地上レーダーと常時リンクして“統合作戦指揮”をする。

つまり――

敵はF-16の位置・高度・速度を常に共有している可能性がある。


これが“情報優勢”だ。」


富沢

「こっちが姿を出す前から予約注文されてる感じですね……撃墜の」


■3. 第2の脅威:MiG-31BM + R-37M


 “超長距離 空中迎撃網”


スクリーンにMiG-31BMの画像が出る。


南條

「MiG-31BMはF-16にとって最大の空中脅威だ。

理由は一つ。

撃墜レンジの桁が違うからだ。


R-37Mの最大射程は

約300km。


これは“視界にすら入っていない相手を落とせる”という距離だ。」


亀田

「ちょっと待って。300kmって……東京から新潟ぐらい……?」


南條

「そう。だからF-16は“当たらなくても”“撃たれるだけで”行動が制限される。」


小宮部長

「つまりF-16は“撃たれないための飛び方”をしないと死ぬ?」


南條

「その通りだ。

だからF-16は 低空で侵入する。

レーダーの地表反射グラウンドクラッターを利用して

“見つからないように”進む。」


野田

「でも低空は危険って前回言ってましたよね……」


南條

「危険だ。

だが低空を飛ばないと、そもそもロシアの長距離攻撃圏で蒸発する。

F-16は“死と隣り合わせの低空侵入”を選ばざるを得ない。」


■4. 第3の脅威:S-300/400の“中距離・長距離ドーム”


スクリーンに円が重なっていく。


南條

「ロシアがウクライナで展開するS-300/400は、

150〜400kmの射程を持つ。


S-400(40N6ミサイル):400km

S-300PMU2:200km

S-300V4:最大300km


この“重ね合わせ”で、

**ウクライナ全土の1/3が“死の空域”**になっている。」


富沢

「F-16はどこを飛んでも危ないじゃん!」


南條

「だからF-16は

●低空侵入

●レーダー非発信

●友軍防空レーダーから“情報借用”

●奇襲ルート

これらの“技術と戦術を同時に回す”必要がある。」


■5. F-16は“単独では絶対に入れない”


 統合作戦の中核は“データリンク”


南條

「F-16は優秀だが、

単独ではロシア防空網に入れない。


だからウクライナのF-16は“ネットワークの一部”として機能する。」


スクリーンに作戦図が映る:


● 後方:NASAMS / Patriot / IRIS-T のレーダー

● 中央:無人機(RQ-20、など)

● 前方:電子戦車両

● 空中:F-16

● 全体をつなぐ:Link-16


南條

「これが“統合火力ネットワーク”。

F-16はこのネットワークの“空中ナイフ”だ。」


小宮部長

「つまり、F-16自身の目は弱いけど、みんなの目で戦う?」


南條

「完璧な理解だ。

ロシアは“単機で強いSu-35”だが、

ウクライナは“ネットで強いF-16”を目指す。」


■6. 作戦の目的は“空を取ること”ではない


 ――“ロシアの空を奪うこと”


南條

「F-16の目的は制空権確保ではない。

そんなことはSu-35・MiG-31の迎撃網の前では不可能だ。


F-16の目的は――」


南條は黒板に太字で書く。


『ロシアが空を自由に使えないようにすること』


野田

「“勝つ”んじゃなくて“相手の勝ちを邪魔する”……?」


南條

「その通りだ。

ウクライナは“相手の制空活動を抑え込む”ことで地上戦力を守る。」


■7. 対地攻撃の本命:JDAM・HARM・SDB


スクリーンに攻撃波の図。


南條

「ウクライナF-16の本命は

対地打撃だ。


● JDAM(GPS誘導爆弾)

● SDB(小直径爆弾)

● HARM(対レーダーミサイル)

● JSOW(滑空兵器、一部供与候補)


これらの武器は“ロシアの防空レーダー・弾薬庫・重要拠点”を潰す。」


橋本副部長

「F-16は空中戦機じゃなくて“精密打撃機”になるんだ」


南條

「むしろそれが本質だ。

米空軍はF-16を“爆撃機として”最も多く使ってきた。」


■8. ロシア防空網への“最初の侵入”シミュレーション


 F-16はどう動く?


南條

「F-16 8機編隊の行動を簡単に示す。」

1.離陸直後から低空(20〜60m)へ下降

2.レーダー沈黙。味方地上レーダーからデータを受信

3.A-50の監視円を避けるルートへ

4.MiG-31 CAPのR-37M攻撃圏の外を斜めに抜ける

5.S-300/400圏の“谷間”に侵入

6.JDAM/SDBの投下ポイントへ到達

7.投下後、反転し上昇→高速退避


南條

「このどこか一つでも誤れば――」


黒板に大きく書く:


『即撃墜』


亀田

「……そんな世界で飛ぶの、想像できないわ……」


■9. それでもF-16は必要


 ――“生存する空軍”は地上戦を救う


南條

「地上戦の死傷率は、上空に敵航空機が来るかどうかで倍以上変わる。

F-16がロシアの航空支援を妨害するだけで、

ウクライナ地上軍は“生き残る確率が跳ね上がる”。」


野田

「F-16って……空を守るんじゃなくて“地上を守る”ものなんだ……!」


南條

「その通りだ。

これから第2章で、実際の“交戦シミュレーション”を行う。」




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