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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン23

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第39章 レオパルト2A6乗員4名の“1戦闘5分間” ②

【01:05】


■車長視点


「敵屋上無力化。砲手、次の掃射へ移れ。

操縦、前進、速度8!」


都市の空に火粉が舞う。

戦車のエンジン音が反響して建物全体を震わせる。


【01:10】


■操縦手視点


道路の中央に、路面の“黒く焦げた円”がある。


IED。


操縦手の胃が縮む。


「……車長、正面、地雷かIEDの痕跡……回避経路要請」


車長


「左路地へ迂回!角度は20度!」


操縦手は反射的にハンドルを切る。


【01:12】


■砲手視点


左の路地は暗い。

熱線映像でもノイズが多く、敵影を断定できない。


「車長、左路地視界悪い、熱源散在……!」


【01:15】


■外部視点


左路地の奥。

車の陰。

そこに潜む別のRPGチームが、

まさに照準を合わせていた。


だがまだ撃たない。

もっと近づくのを待っている。


【01:20】


■装填手視点


揺れの中、次の弾、HEAT-MPを抱えたまま、

装填手は目を閉じて揺れの周期を感じ取る。


“前へ傾く……戻る……また傾く……”


谷が来た。


装填――

カチャン。


【01:23】


■砲手視点


熱線映像の奥――

一瞬、光が跳ねた。


それは……

ロケットモーターの反射。


「車長!左路地奥、AT射手確認!距離50!」


車長


「操縦止まれ!」


【01:24】


■操縦手視点


ブレーキ。

戦車が沈むように停止。

履帯の軋み。

狭い路地で巨体が“呼吸を止めた”。


【01:25】


■外部視点


路地奥のRPG射手が引鉄を絞る——

まさにその瞬間。


【01:26】


■砲手視点


十字がその影を捉えた。

距離近すぎ、揺れ激しい。

だが……迷っている暇はない。


「射撃!」


引き金。


【01:27】


■外部視点:近距離砲撃


120mm砲弾が路地の入口で炸裂。

爆風が左右の壁に跳ね返り、

路地全体を“真っ白な圧力”で満たした。


RPGチームは吹き飛び、

周囲の車ごと破壊される。


【01:32】


■車長視点


「敵RPGチーム無力化。

全乗員、生存確認。」


耳の奥で自分の鼓動が響く。

戦車の中の空気は、

砲撃の熱で重く、焦げ臭い。


【01:40】


■操縦手視点


「……操縦、生存……前進可能……」


ハンドルを握る手が震えている。

ブレーキを離し、ゆっくりと進む。

路面が再び揺れ始める。


【01:55】


■砲手視点


照準器越しの世界は、

もう“色”ではなく“情報”に見える。


穴。

影。

熱源。

乱れ。


砲手の眼は、

恐怖で研ぎ澄まされていた。


【02:20】


■装填手視点


腕が痺れ始める。

だが、

戦闘はまだ終わっていないことが体にわかる。


弾倉を見つめて、

次の“谷”を探す準備をする。


【03:00】


■外部視点(市街全景)


レオパルト2A6は煙の中を進む。

歩兵がその両脇を走り、

ドローンが上空を舞い、

遠くで砲声が響き続ける。


戦車の砲塔はゆっくり左右に動き、

四人の乗員は必死に“世界を見ようとしている”。


だが世界は広すぎ、

戦車の中は狭すぎる。


【04:30】


■車長視点


「全周クリア。

次の交差点へ向かう。」


彼は喉を鳴らし、

頭の奥の痛みを押し返す。


“まだ、終わっていない”


【05:00】


■全視点同時:


― 5分間生存した戦車乗員の“沈黙”


砲手:照準器から目を離せない。

操縦手:ハンドルの汗を拭えない。

装填手:腕が震えるまま、次の弾を抱える準備。

車長:次の死角を探す。


5分戦っただけで、

4人は“1日分の体力”を消費していた。


だが、これが都市戦の真実だった。


■エンディング


南條がホールの照明を上げる。


南條


「これが、レオパルト2A6乗員の“5分”だ。

外から見る強さと、中の現実は全く違う。

戦車の性能ではなく——

4人の技量、恐怖、判断、同期。

それだけが戦車を生かす。」


野本は震える声で言った。


野本


「……戦車って……“4人の命綱”なんですね……」


富山

「5分で心が壊れそうでした……」


亀山

「戦車の中って……人間の弱さがむき出し……」


小宮部長

「だけど、強さもだね……」


重子

「4人が一緒じゃなかったら絶対生き残れない……」


山田

「……これが、最前線……」


南條は静かに頷いた。


南條


「戦車は“鉄”ではなく、人間でできている。

都市戦はそれを容赦なく試す。

そして、生き残った時——

人間の強さも弱さも、すべて露わになる。」



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