第30章 NLAW②
■トップアタック:天井装甲への“落下弾道”
スクリーンが鳥瞰視点に切り替わる。
ミサイルが低空を飛び——
戦車の真上で突然、下向きに爆発する。
https://www.turbosquid.com/3d-models/3d-nlaw-next-generation-light-antitank-weapon-model-1981712より引用
【富山】
「落ちた……ミサイル、上を通って……落ちた……!」
【南條】
「NLAWのトップアタックは『上を飛び越えて爆発する』方式だ。
戦車は上からの攻撃に最も弱い。
だから——最短距離で確実に殺せる。」
(野本が耐えきれずに目をそらす。)
■市街地伏撃:角の陰・一撃離脱
(VRが“キエフ郊外・ブチャの市街地”に切り替わる。)
建物の影に潜む射手視点。
遠くからT-72B3の砲塔の影が近づいてくる。
【南條】
「いいか。
ここでは“撃ったら死ぬ”。
戦車の同乗歩兵が角を警戒している。」
【重子】
「……怖い……。」
南條
「怖いまま動け。
膝を震わせながらでも、照準を合わせろ。」
▼実戦:2秒追従 → 発射 → 逃走40秒以内
(角から半身を出し、全員がNLAWを構える。
戦車が横切ろうとする。
履帯の雷鳴のような音が腹に響く。)
【野本】
「2秒……2秒だけ……!!」
(野本、照準。重子も震えながら照準。
亀山は顔をしかめ、1秒半で妥協して撃つ。)
——発射。
ミサイルは建物の隙間を滑るように飛び、戦車の真上で爆発。
車体が揺れ、煙が上がる。)
【山田】
「命中……した……!!」
▼直後:逃走
(しかし敵砲迫が飛んでくる。)
南條
「逃げろ!
座ってる暇はない!
撃った場所は即座に特定される!!」
(全員、建物裏へ走る。)
だが——
シミュレーションの計算は冷酷だ。
《ピシャァァン!》
破片が飛び散り、亀山と富山が“戦死扱い”で倒れる。
【亀山】
「えっ……うそ……私、1秒半で撃ったから……?」
【南條】
「照準不足で発射角がズレた。
結果、敵戦車が破損に留まり、生存兵がコーナーを制圧した。
1秒の妥協は部隊全滅に繋がる。」
(富山、震えた声。)
【富山】
「……戦争って……こんな……わずかの差で……?」
南條
「そうだ。
1秒の迷いが、世界を変える。」
■ “素人にも人を殺せる力”を与える兵器の倫理
(全員が演習後の座席に戻る。
スクリーンには、破壊された戦車と、逃げ惑う避難民の影が映る。)
【野本】
「ジャベリンは……まあ、難しいから“兵士の訓練”って感じだったけど……
NLAWは……怖い。
“私みたいな素人でも、当てられる”っていう怖さがある。」
【南條】
「それがNLAWの本質だ。」
(南條が歩きながら言う。)
【南條】
「NLAWは“扱いやすさ”と“殺傷効率”が極端に高い。
だからこそ——
世界の都市に大量投入された時、何が起きるか。
それを考えなければならない。」
(重子が涙をこぼす。)
【重子】
「……兵器って……怖いからこそ……
正しく扱わないといけないんですね……。」
【南條】
「兵器は正しく扱っても悲劇を生む。
だが“知らないまま握ること”が最悪だ。」
(小宮部長が深く頷く。)
【小宮部長】
「……理解するって、こんなに重いんですね……。」
【南條】
「重い。
だが、この重さを知らない者が“戦争の判断”をすると、
必ず間違える。」
(スクリーンが暗転する。)
■《NLAW完全訓練編・了》




