第29章 NLOW①
■《NLAW完全訓練編 本編》
——新寺子屋・兵器シミュレーションホール
講師:南條
生徒兵士:野本・富山・亀山・小宮部長・橋本副部長・重子・山田
■第1章 “2秒で未来を撃つ兵器”の前に立つ
(ホールの中央に、ジャベリンより一回り小さな筒が静かに置かれている。
薄い黄緑色の発射管、控えめな金属部品。しかし、そこにあるのは“近距離戦術の革命”だった。)
http://www.rusmilitary.com/html/missles_launchers.htmより引用
【南條】
「今日扱うのは——NLAW。
ジャベリンと違って“一撃使い捨て”。
だがこいつの最大の特徴は……**“素人でも戦車を撃破できる”**ことだ。」
(亀山がひょい、と筒を持ち上げる。)
【亀山】
「軽いじゃない……? これ、ホントに戦車倒せるの?」
【南條】
「倒せる。
しかも100m以内なら、ほぼ避けようがない。
これは“未来位置予測射撃”を個人が使える時代の産物だ。」
(野本が首をかしげる。)
【野本】
「未来位置って……未来の場所、ですか?」
【南條】
「そうだ。
ミサイルが“敵戦車の数秒先の位置”に向かって飛ぶ。
つまり——」
南條
「君が敵を“2秒見てるだけ”で、命中計算が完了する。」
(ホールの空気が固まる。)
■第2章 PLOS:予測照準線という“知能”
スクリーンが点灯し、NLAWの照準器から見た映像が映る。
十字線と、動く戦車のシルエット。
それに合わせて照準線が少し遅れて追尾する。
【南條】
「この照準器を戦車に向けて2〜3秒追従させる。
これだけで、ミサイル内部のコンピュータが軌道を計算する。」
【富山】
「えっ……そんな簡単で……?」
【南條】
「ジャベリンは“撃つのに勇気がいる”。
だがNLAWは“撃ててしまう”。
……それが危険なんだ。」
■第3章 構造解説:“殺傷力のシンプルな完成形”
(スクリーンにNLAWの内部透過図。)
▼1. ロケットモーター
後部の推進ロケットは短い距離で最大速度に達する。
街角から飛び出し→撃ち→即退避が可能。
▼2. HEAT弾頭(トップアタック用)
小型だが天井装甲なら貫通可能。
▼3. HERO SAFE(暴発防止機構)
射手が倒れてもすぐには暴発しない。
ただし
「安全すぎる」という誤解が起きやすい。
(南條が鋭く言う。)
【南條】
「兵器に“安全”などない。
HERO SAFEは“誤操作で爆発しにくい”だけだ。」
亀山がNLAWを即座に元の台座へ置く。
■第4章 最も危険な距離:100m
スクリーンが市街地のT字路を映す。
【南條】
「NLAWの真価は100m以内の接敵。
これは、“敵とほぼ同じ建物の影で戦う”距離だ。」
(重子が唾を飲む。)
【重子】
「その距離だと……敵の戦車の音、聞こえますよね……?」
【南條】
「聞こえるどころか、地面が震える。
履帯が石畳を砕く音が直に伝わる。
そんな距離で、君たちは“2秒だけ姿を晒して照準”しなければならない。」
(野本が息を飲む。)
■第5章 手順:ジャベリンより“速く、簡単、そして危険”
南條がNLAWを皆の前に置き、実機と同じ操作パネルを示す。
▼手順1:安全装置を外す(セーフティピン)
南條
「まずセーフティピンを抜く。
これでNLAWは“発射準備完了”になる。」
【富山】
「えっ、ジャベリンより早い……!」
【南條】
「早いから事故が多い。」
▼手順2:照準器を展開
(ワンタッチで横に開く)
橋本副部長が展開してみる。
【橋本副部長】
「軽い……。まるで玩具みたいだ。」
【南條】
「玩具のように軽いから、人を殺す能力が一般に拡散した。
兵器の進化とは“殺しやすさの民主化”の歴史だ。」
▼手順3:PLOS照準(2〜3秒追従)
スクリーンに動く戦車が映る。
南條
「戦車に十字線を合わせ、2秒追う。
その間、体を晒す。」
(全員がVRで照準体勢を取るが、戦車の動きの早さに驚く。)
【亀山】
「ちょっと! 2秒長い! 絶対見つかるじゃない!」
【南條】
「実戦では1秒半で妥協する兵士もいる。
だが1秒半では命中率が大きく落ちる。」
(心理的負荷が表情に出る。)
▼手順4:発射(バックブラスト注意)
南條
「NLAWは“バックブラスト低減型”。
屋内から撃てる。
これが市街地で強すぎる理由だ。」
(野本がトリガーを引く。)
「——!」
(ミサイルが発射され、屋内での反動は最小限。
しかし高い生成音圧が胸に響く。)




