第26章 ジャベリン①
——新寺子屋バーチャル戦闘学習ホール
講師:南條
兵士役:野本・富山・亀山・小宮部長・橋本副部長・重子・山田
■第0章 “兵器の前に人間がいる”という確認
(薄暗いホールに、軍用級VRデバイスが7基、等間隔で並ぶ。
床にはジャベリンの実寸大シミュレーションモデルが置かれ、黒いカバーの下からミサイルのシルエットが覗いている。)
https://www.littlearmory.jp/product/detail.html?id=la103より引用
【南條】
「よし、全員座れ。
今日扱うのは——FGM-148 “ジャベリン”。
トップアタック式の携帯対戦車ミサイル。
現代戦を象徴する“個人携行兵器の革命”だ。」
【亀山】
「革命って言われても……これ、私が持つの? 重いんじゃない?」
【南條】
「本体11.8キロ、CLU(発射装置)が6.4キロ。
合わせて18キロだ。
だが問題は重さじゃない。
“撃ったら人が死ぬ”という現実を持つ道具だということだ。
重さは、覚悟の方がずっと勝る。」
(野本が小さく息をのむ。)
■第1章 構造の理解:ジャベリンは“二段階で殺す”
【南條】
「まず構造からだ。」
(ジャベリンの透過模型がスクリーンに立ち上がる。)
▼1. タンデム弾頭(HEAT:対戦車用成形炸薬)
南條
「見ろ。この先端に小さな成形炸薬、後ろに本命の大きな成形炸薬。
これは“タンデム方式”といって、
敵戦車が持つERA(爆発反応装甲)を前段で破壊し、後段で本装甲を貫く仕組みだ。」
【富山】
「え、そんな二段ロケットみたいな……?」
【南條】
「そう。“爆発する盾と、本体の装甲”を二つまとめて貫く必要があるからな。」
▼2. CLU
赤外線映像センサー+操作ディスプレイ
南條
「兵士はこのCLUを覗き、赤外線映像で標的を捕捉する。
暗闇でも、煙の中でも、敵戦車の“熱”は隠せない。」
(野本が覗くと、白と黒のコントラストの中にエンジン熱源を表す白い塊が浮かぶ。)
【野本】
「……こんなにくっきり見えるんだ……。」
▼3. BCU(Battery Coolant Unit)
電源+冷却を19秒で完了させる“一発限りの使い捨て”
南條
「シーカー(目に相当)は-40℃まで急冷しないと機能しない。
BCUは、そのための電源+冷却剤だ。
装着した瞬間から約4分で寿命が尽きる。
つまり……」
【南條】
「撃つと決めたら4分以内に撃て。
迷ったら、撃つな。」
(その重さに、重子が無言で手を握りしめる。)
■第2章 撃つ前の“判断”だけで半分勝負が決まる
【南條】
「兵器の使い方を教える前に、まず“撃つ前に死ぬ理由”を説明する。」
(スクリーンに、都市の廃ビル、塹壕、森林帯の写真が並ぶ。)
▼1. 射線
南條
「敵戦車は“見つけたら撃つ”。
ミサイルは木や壁に当たれば終わり。
射線の確保が第一だ。」
【橋本副部長】
「つまり……視界が取れなければ、撃つ資格がない?」
【南條】
「そう。遮蔽だけあっても意味がない。
“撃てる遮蔽”は、実戦では非常に少ない。」
▼2. 撃つ距離:最長2500m
南條
「だが2500m先の戦車を見つける視力は、人間にはない。
だから……」
【南條】
「ジャベリンは“狙った距離より近く”撃たれるのが実情だ。」
(富山が目を見開く。)
▼3. トップアタック/ダイレクトアタック
南條
「戦車の天井装甲は最も薄い。
だから普段は“トップアタック”。
ミサイルは150mほど上昇し、上から突っ込む。」
(映像シミュレーション:ミサイルが弧を描いて、戦車の砲塔上面へ落下する。)
【亀山】
「落ちてくる……!? 何それ、怖い……。」
南條
「逆に市街地の屋根が邪魔な場合は“ダイレクト”。
この判断を誤ると、味方の建物が吹き飛ぶ。」
▼4. LOBLとLOAL
(LOBL=発射前ロックオン、LOAL=発射後ロックオン)
南條
「ロックオンしてから撃つか、撃ってからロックオンさせるか。
屋根越しに撃つなら“LOAL”だ。」
【野本】
「そんな……ゲームみたいなモード変更が……実戦で?」
南條
「ゲームじゃない。
どのモードを選ぶかで、生き残るかが変わる。」
(野本の表情が固まる。)




