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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
343/2254

第108章 横須賀第3ドック・大和艦内改修打ち合わせ(D-149)


艦内通路には仮設照明がぶら下がり、鉄と油の匂いが満ちている。

弾薬庫手前の区画で、防衛省の技術官、民間造船所の現場主任、そして昭和の大和乗員が図面を広げて立っていた。


民間造船所主任・安西

「ここの外板に爆風吸収パネルを溶接する案ですが、厚みは最低でも80ミリになります。

 既存のリブ(船体肋骨)の強度を超えないよう、支柱の追加が必要です」


防衛装備庁・構造技術官・小牧

「支柱は高張力鋼でお願いします。溶接は内側からも当てる二重構造に。

 ただし工期は3日延びる見込みです」


大和砲術長・村瀬少佐

「工期を削る方法はないのか? 弾薬庫の補強が遅れたら、砲撃の準備に支障が出る」


安西

「外板補強は後回しにして、まず内側の隔壁と自動防水ハッチを先行施工する手もあります。

 これなら弾薬庫の防水化だけ先に完了できます」


小牧

「隔壁はCICと機関部にも同型を設置します。浸水センサーは光ファイバー式で、感知から2秒以内に作動」


村瀬少佐

「2秒……昭和の手動閉鎖に比べりゃ夢みたいだな。

 ただ、ハッチが作動する前に中の人間を巻き込まれないよう、警告シグナルを付けろ」


安西

「了解。赤色警報灯とブザーを追加します。作動前に1.5秒の警告を出す仕様にしましょう」


小牧

「甲板上の兵装区画も追加装甲二層構造です。

 セラミックとケブラー層の間に衝撃吸収材を入れますが、砲弾の爆風で剥離しないよう接着剤を耐熱型に変更します」


村瀬少佐

「その追加装甲、重さはどのくらいだ?」


安西

「全体で約180トン。艦の安定性には影響しますが、燃料搭載量を若干減らして重心バランスを取ります」


村瀬少佐

「燃料が減れば行動半径も縮む……まあ、沈むよりはマシだがな」


会話が一段落すると、安西が図面を丸めながら呟いた。

「……心臓と牙だけを守るってのは、案外割り切りが要る仕事ですね」


村瀬少佐は静かに笑った。

「戦場じゃ、全部を守ろうとする艦は真っ先に沈む。

 生き残るのは、守るべき場所を間違えない艦だ」

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