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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
339/2267

第104章 いずも型護衛艦「いずも」・混成運用訓練(D-144)


昼を過ぎ、甲板は訓練用のマーキングライトが点灯し始めていた。

今度の訓練は、有人SH-60K哨戒ヘリと無人VTOL機を同一飛行区画で運用する混成ミッションだ。

艦橋の航空管制室には、甲斐三佐と加藤兵曹長が並んで立ち、ガラス越しに甲板全体を見下ろしている。


甲斐三佐

「無人機は哨戒コースに入れて、有人ヘリは対潜ダミー攻撃。

 両機が同じ旋回パターンに入る前にタイムスロットを切り替えます」


加藤兵曹長

「頭じゃ分かるが……こりゃ同じ空でやるには狭ぇな」


発艦信号が送られ、まず無人VTOL機が軽々と上昇し、定められた哨戒コースへ進む。

続いてSH-60Kがローターを回し、低い重低音を響かせて滑り出す。


加藤は双眼鏡を構え、風向と雲の動きをじっと観察していた。

その表情がわずかに固まる。


加藤

「三佐、前方の積雲、急に降りてきてる。風が巻き込むぞ」


甲斐(端末を確認)

「……気象センサーには変化なしですが?」


加藤

「センサーは風向塔の高さしか見ねぇだろ。甲板上じゃ横風が強くなってる」


その直後、無人機の姿勢制御がわずかに乱れた。

SH-60Kの進入ルートと交差する可能性が一瞬で高まる。


加藤(即座に)

「無人機、コースから外せ! 左舷側に退避!」


甲斐(無線)

「ドローン1、左舷退避! 有人機はパターンBに変更!」


指示から数秒で、無人機が旋回して回避、SH-60Kは進路を切り替えて着艦態勢に入る。

衝突まで十数秒という危険は、現場の判断で消えた。


甲斐

「……センサーが拾う前に判断されるのは、正直驚きますね」


加藤

「空と海は生き物だ。数字より先に、肌が教えてくれる」


SH-60Kが無事着艦し、ローターを止める音が冬の甲板に消えていった。

甲斐は管制卓のデータログを保存しながら、横目で加藤を見た。

現代のシステムと昭和の勘、その両方が揃って初めて守れる空がある——




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