第101章 特別折衝会合(非公式)
B-7会議室別室 ―
艦艇模型や歴代艦長の写真が飾られた小さな応接室。
長机には、防衛装備庁の調達部長、防衛産業大手「東邦重工」の社長、造船関連の議員連盟幹部、そして財務省主計局の係長が座っていた。
東邦重工・社長
「……つまり、大和の機関換装で使う現代型ボイラーは、当社が今稼働している呉のラインを転用すれば、4基まとめて生産可能です。
ただし、生産枠を確保するには、民需向けの建造案件を数件先送りする必要がある」
調達部長(防衛装備庁)
「先送り分はどうする? 港湾庁やフェリー会社から苦情が出る」
議員連盟幹部(与党)
「その調整はこちらでやる。港湾庁には『安全保障優先措置』の覚書を出させる」
財務省・係長
「予算措置は? 補正予算案に入れるには、明日までに金額を出してもらわないと」
東邦重工・社長
「補正には『南西防衛即応強化事業』として計上してください。名目は艦艇補修・燃料効率改善。
ただし……実際はボイラー4基のうち、2基は新型哨戒艦への流用が可能です」
議員連盟幹部
「それは正式契約前に公表できる話か?」
社長
「もちろん公表はしません。ただ、発注と同時に呉のラインに追加設備を入れれば、来年度からは哨戒艦シリーズの連続建造に移行できます」