第221章 第5章《デンマーク海峡海戦:巨砲の交差と破滅》 8/15
― “1.5秒の地獄:弾薬庫爆発・艦体断裂・フッド消滅” ―
⸻
【243:午前6時23分43秒・フッド後部上空 ― 決定弾が迫る】
ビスマルク第七斉射の弾は
空気を切り裂きながら進む。
フッド見張り員:
「……来る……
もう避けられない……!」
弾頭は高度・速度・角度ともに
**“後部弾薬庫へ届く完璧な落下条件”**を満たしていた。
・距離 約26.7 km
・落角 約14~16度(歴史的推定値)
・着弾位置 フッド後部装甲段差(薄弱部)
・内部はすでに高温高圧ガスで飽和
この条件が揃うことは、
戦史上でも稀だった。
しかし今、揃ってしまった。
⸻
【244:午前6時23分43.6秒・弾が装甲に接触】
衝突音ではなく、“切り裂く音”。
フッド後部の水平・斜面装甲は
ビスマルク弾の貫通力に対し“角度が悪すぎた”。
・弾速
・重量
・落角
・装甲の厚みと傾斜
これらが揃い、装甲は
**「叩き割られる」のではなく「押し開かれる」**形で破壊された。
後部隊長(なぜか静かに):
「……入った……」
⸻
【245:午前6時23分43.9秒・砲弾が弾薬庫前室へ突入】
衝突の次に起きたのは、
爆発ではなく “圧の逆噴射” だった。
整備兵:
「空気が……押し戻されて……!」
砲弾が内部に入る瞬間、
高温の火焔とガスが
“外へ向けて”噴き返される。
これは、
弾薬庫内のガス圧がすでに異常水準だった
ことを示す物理現象だった。
そして砲弾は
火焔の中に姿を消す。
⸻
【246:午前6時23分44.2秒・“失われた0.3秒”】
砲弾が弾薬庫の“火薬そのもの”に接触したとき――
爆轟(detonation) が発生した。
火薬庫はすでに
・熱
・圧
・酸化ガス
が飽和し、
わずかな火花でも
全域が“連鎖爆轟”に移行する条件だった。
その0.3秒は人間には知覚不可能で、
船体には致死すぎた。
⸻
【247:午前6時23分44.5秒・フッド後部弾薬庫、爆発】
地獄が始まった。
音ではなく、
**“眩い白光”**が最初に起きた。
後部甲板の上へ、
白色の爆炎が“逆柱”となって突き上がる。
艦橋から見えたのは
“太陽のような白光”だった。
艦橋士官:
「光だ……!?」
副官:
「後部が――!!」
⸻
【248:午前6時23分45秒・フッド後部が“吹き飛ぶ”】
木材でも鉄でもなく、
“固体そのものが溶けて飛ぶ”。
爆圧は全方向へ解放され、
特に 上方と前方 に集中した。
推定爆圧は
3000〜6000 psi(戦艦の隔壁を粉砕する圧)。
後部煙突・マスト・船体上構物が
瞬間的に蒸気の柱に飲み込まれ消失。
見張り員(POW):
「フッド後部――
無くなった……!?
そんな……!!」
⸻
【249:午前6時23分45.4秒・艦体中央の“断裂”】
後部の爆圧は
艦体中央の骨格へ“逆流”し、
長さ80メートル以上の
内部隔壁・縦強度メンバーが破壊された。
艦体中央が――
「メリッ」と音を立てて折れた。
艦中央航海士:
「甲板が……割れていく!!
艦が……!」
⸻
【250:午前6時23分45.8秒・艦橋まで届く“音と風”】
艦橋の全員が、
“鉄風”を顔に受けた。
衝撃波ではない。
艦後部が高速で前方へ飛ばされた風だった。
操舵士:
「後ろから……
爆風が押してくる!!」
士官(呆然):
「艦が……
曲がる……!!」
フッドは「沈む前」に
**“折れた”**のだ。
⸻
【251:午前6時23分46秒・艦体後部が海へ消える】
後部構造物は完全に分離し、
巨大な瓦礫の塊となって
煙と炎を引きながら後方へ沈む。
POW見張り員:
「後部が……海に落ちた……!!
船が二つに折れたんだ!!」
⸻
【252:午前6時23分46.3秒・前半部は“まだ進んでいる”】
推進軸は後部にあったため、
前半部はエネルギーを失っている。
しかし――
爆発の衝撃で慣性が残り、
前半部だけが数秒、前に走り続ける。
艦橋内の全員が
足元の角度の変化に襲われた。
副官:
「艦が……前のめりに……!!」
カー艦長(目を見開き):
「これは――
船が“折れ落ちている”!!」
⸻
【253:午前6時23分47秒・前半部が急激に傾斜する】
艦橋の床が
突然 20度以上の角度をつけた。
操舵士:
「傾斜が止まりません!!」
航海長:
「艦首が沈み込み始めています!!」
提督ホランド(声は、もう呟きのよう):
「……これが……終わりか……」
彼は最後まで席を離れなかった。
⸻
【254:午前6時23分47.8秒・火焔が艦橋を飲む】
後部の爆発は
中央隔壁を食い破り、
猛烈な炎のトンネルとなって
艦橋へ向かって迫ってきた。
部下たちが叫ぶ。
副官:
「提督!!
退避を!!」
しかし炎は
それよりも速かった。
⸻
【255:午前6時23分48秒・フッド前半部が爆炎に包まれる】
艦橋を含む前半部全体が
巨大な火球の内部に吸い込まれた。
外から見れば、
一瞬だけ
“艦が光の球になったように”見えた。
POW 見張り員:
「……見えない……!
フッドが……光に……!」
⸻
【256:午前6時23分48.5秒・艦橋、瓦解】
爆圧は
防御されていない艦橋構造物を貫通し、
内部を吹き飛ばした。
ホランド提督は
一瞬も恐怖を声にせず、
艦とともに消えた。
カー艦長、航海長、通信士官、操舵士――
艦橋にいた者は全員、
一瞬で蒸散または圧殺 された。
⸻
【257:午前6時23分49秒・フッド、海面へ没する】
前半部は大きく折れ曲がりながら沈み、
海面に 巨大な“空洞” が生じた。
ビスマルク艦橋:
「……消えた……?
フッドが……
見えない……」
副長は呟く。
「いや……
もう“無い”んだ……」
⸻
【258:午前6時23分50秒・戦場は静寂に沈む】
わずか 3秒 の出来事だった。
•第七斉射着弾
•弾薬庫爆轟
•後部消失
•艦体断裂
•前半部沈没
•艦影消滅
音よりも早く
光が消え、
煙が残り、
海だけが静かに波を立てていた。
プリンス・オブ・ウェールズ艦長リーチ:
「……信じられん……」
ビスマルク艦長リンデマン:
「――やったぞ!!
あの巨大艦を撃沈した!!」
しかし、その勝利の言葉よりも先に、
戦場には“深い虚無”が漂っていた。
⸻
【259:章末(8/15) ― フッド 1420名、ほぼ即死】
午前6時23分50秒。
フッドは完全に消失した。
生存者 3名。
▼ この1.5秒で起こった現象
•380mm砲弾の後部装甲段差貫通
•弾薬庫内でのガス圧連鎖爆轟
•爆圧による艦体中央縦強度破壊
•後部構造物吹き飛び
•前半部の慣性走行 → 沈没
•艦橋の瞬間的消失
▼ 心理
•フッド艦橋は沈没の直前まで勝てると信じていた
•POWは“見て理解する”が何もできない
•ビスマルクは勝利よりも“静寂”を感じる




