第215章 第5章《デンマーク海峡海戦:巨砲の交差と破滅》 6/15
― “第六斉射前夜:火焔が弾薬庫の扉に触れる瞬間”
【215:午前6時21分40秒・フッド艦橋 ― 直撃後の衝撃波】
艦橋全体が“右へわずかに”傾いた。
操舵士:
「舵が……一瞬抜けました!!
いまは復帰!!」
副官:
「後部火災の炎が……
まるで“吹き返されるように”上がっています!!」
ホランド提督(歯を噛みしめ):
「まだだ……
まだ速度を落とすな。
あと数キロ……
奴の優位を消す!!」
艦長カー:
「提督、後部損害報告が……来ません。
連絡線が焼き切れています!」
“最悪の兆候”を示す言葉だった。
⸻
【216:午前6時21分45秒・フッド後部区画 ― 火焔の跳ね上がり】
整備兵(叫ぶ):
「圧が……上がってる!!
炎が吸い上げられてるんだ!!
この空気流動は――」
隊長:
「後部弾薬庫に“空気が流れて”いる……!?
隔壁の歪みが……風を作ってるんだ!!」
隔壁温度計:
75°C → 120°C → 180°C
(ペースが“倍速”になっている)
隊長:
「まずい……まずいぞ……
この速度は異常だ……!!」
整備兵:
「隔壁の奥、金属の色が変わってきてる!!
赤熱化し始めてる!!」
火災は消せなかった。
理由は単純で絶望的だ。
フッド後部装甲は“水平装甲が極端に薄い”。
ビスマルクの重弾は
“垂直落下気味”に入ってきていた。
⸻
【217:午前6時21分50秒・ビスマルク艦橋 ― 次弾準備】
砲術長シュテルツェル:
「第五斉射、命中1、至近弾多数。
フッド後部の炎が増大!」
副長:
「次で終わらせるか?」
砲術長:
「まだ敵の速力が落ちていない。
だが間違いなく崩れている。
第六斉射は“後部から転じて中央”を狙う。」
艦長リンデマン:
「主砲第六斉射、急げ。」
⸻
【218:午前6時21分55秒・プリンス・オブ・ウェールズ艦橋 ―「焦り」】
副長:
「距離は徐々に縮んでいるが……
フッドの火災が明らかに拡大しています!!」
艦長リーチ(低い声で):
「……ホランド提督の判断が重すぎる。
あの距離では“装甲傾斜の弱点”を晒してしまう……」
操舵士:
「艦長、フッドの後部炎が……深刻です!」
艦長:
「砲撃を続けろ。
撃ち続けて――
少しでもフッドの負担を軽くするんだ!」
砲術長:
「第六斉射、準備中!!」
⸻
【219:午前6時22分・フッド見張り台 ― 重圧の空気を読む男】
見張り員(双眼鏡を固く握りしめ):
「火柱が……上がったり……吸い込まれたり……
炎が“逆風”で動く……!?
そんなこと……あるのか……?」
風向は安定している。
それなのに炎が“逆方向へ吸い込まれる”。
彼は理解した。
「……船体内部で……負圧が起きてるんだ……
下で何か……巨大な空気の動きが……」
それは弾薬庫の“準備爆発”に直結する危険サインだったが、
艦橋には届かない。
⸻
【220:午前6時22分05秒・ビスマルク主砲塔 ― 第六斉射】
砲塔指揮官:
「照準良し!!
目標軌道、安定!!」
砲術長:
「第六斉射――撃てッ!!!」
380mm砲による六度目の爆発的閃光が
戦場を貫いた。
見張り員(POW):
「また来た……!!
あの弾道、今までより水平寄りだ!!
落下じゃない……“刺し込んでくる”!!」
⸻
【221:午前6時22分10秒・フッド艦橋 ― ついに“致命の報告”が上がる】
通信兵(絶叫):
「提督!!
後部弾薬庫前室の温度が――
200°C突破!!
“点火の危険あり”!!」
艦橋の空気が一瞬凍りついた。
ホランド提督:
「……後部への注水はできんのか!!」
通信兵:
「損害班、注水路が炎で閉塞!
近づけません!!!」
艦長カー:
「提督、
弾薬庫の誘爆を防ぐには――
“艦尾を敵に向けて”火勢を風で押さえ込む必要があります!」
ホランド提督:
「いま向きを変えれば――
我々は“横腹”を晒す!!
それは敗北だ!!!」
副官(小声):
「しかし……このままでは……」
艦橋の全員は理解していた。
だが命令は命令だった。
⸻
【222:午前6時22分15秒・フッド主砲塔 ― 第六斉射準備】
砲術将校:
「照準修正……!
だが揺れが大きい!!
火災の影響で船体後部が不安定だ!!」
砲塔員A:
「砲塔後部の空気が熱い……!」
砲塔員B:
「後部区画の火が……ここに近づいてる!!」
砲術将校:
「撃てるうちに撃て!!」
戦術的にも物理的にも、
この第六斉射は“フッド最後の有効射撃”となりつつあった。
⸻
【223:午前6時22分20秒・フッド第六斉射】
ホランド提督:
「撃て!!」
轟音。
三連装砲塔はもはや全力の回転ではなく、
やや遅れ気味に火を噴いた。
副官:
「弾道……安定していません……!」
⸻
【224:午前6時22分25秒・POW第五斉射】
砲術長:
「第五斉射、発射!!」
見張り員:
「右舷側前方へ着弾!!
至近弾だが深刻な損傷なし!!」
⸻
【225:午前6時22分30秒・運命まで残り“170秒”】
ビスマルク第六斉射が飛翔中。
フッドは火災が弾薬庫の扉に迫っている。
しかし――
艦橋の誰も“あと3分足らずで艦が消える”とは思っていない。
航海長:
「距離27.2キロ!
もうすぐ射角の不利は消える!!
我々が勝つ!!」
副官(心の中で):
「……どうか持ってくれ……
後部隔壁よ……!!」
⸻
【226:午前6時22分35秒・フッド後部 ― 臨界直前】
整備兵(絶叫):
「隔壁が赤熱化!!
温度230°C!!
表面の塗装が剥がれ落ちてる!!」
隊長:
「このままでは……
“内部火薬のガス圧”が上がってしまう!!
誘爆が……!!」
全員沈黙。
その沈黙を破るように、
頭上から“金属を叩く巨大な音”。
整備兵:
「ビスマルクの弾が来た!!」
⸻
【227:午前6時22分40秒・ビスマルク第六斉射着弾】
見張り員:
「直撃コース!!
今度は中央部――!!」
着弾。
中央構造物周辺が“えぐれたように”爆砕する。
爆炎が横に吹き抜ける。
副官:
「中央部損傷!!
だが後部への追加火災は……確認できず!!」
ホランド提督:
「よし……
まだ持つ!!
この距離まで来れば我々が――」
だがその言葉を遮るように、
後部から衝撃音が響いた。
⸻
【228:午前6時22分45秒・後部隔壁 ― 崩壊音】
整備兵:
「隔壁……!!
“たわんだ”!!
いや――裂けた!!」
金属が悲鳴を上げる音。
火焔が“吸い込まれるように”消える。
隊長:
「弾薬庫前室へ……火が……!!
火が入った!!!」
その瞬間――
火薬の“微細爆轟”が始まる。
整備兵:
「ゴボッ……!?
空気が……逆流して――」
火焔が吸い込まれた先では、
膨張ガスが致命的反応に向けて合成されつつあった。
⸻
【229:章末(6/15)・運命の“カウントダウン”開始】
午前6時22分45秒。
フッド沈没まで 残り約135秒。
▼ フッド
•後部弾薬庫前室に火焔が侵入
•隔壁が赤熱化し、ついに破断
•船体中央にも被弾
•速力維持したまま、まだ勝てると艦橋は信じている
•後部の状況はもう誰にも制御できない
▼ ビスマルク
•照準は完全に“殺しの軌道”
•次の第七斉射が決定打となる可能性が極めて高い
▼ プリンス・オブ・ウェールズ
•砲塔故障しながらも射撃継続
•しかしフッドの状況を完全には理解できていない
このあと 7/15 で――
“第七斉射と弾薬庫爆発前20秒” に突入します。
続けますか?




