第212章 ◆第5章《デンマーク海峡海戦:巨砲の交差と破滅》 3/15
― “第三斉射の攻防/命中までの時間差/戦場が“噛み合っていく”瞬間” ―
【174:午前6時15分00秒・フッド砲術指揮所 ― 「運命の第三斉射」準備】
砲術長:
「第一斉射・第二斉射の偏差、計算完了!
目標補正は微小!
この第三斉射は“決まる可能性がある”!!」
火器管制士官:
「仰角−0.4度、方位+0.2度……
補正完了!!」
艦長カー:
「提督!
砲術指揮所より――
“第三斉射準備完了”!」
ホランド提督:
「よし。
フッドの伝統すべてを、この一撃に――
撃て。」
⸻
【175:午前6時15分10秒・フッド第三斉射】
フッドの主砲が三度、牙を剥いた。
三連装砲塔が同時に火を噴き、
巨大な砲炎が船体を照らす。
見張り員(POW):
「フッド、また撃った!!
くそ……まだ距離があるのに……
あの艦は本気だ!」
副官:
「本気というより、
“急いでいる”んだ。
フッドは装甲が弱い。
長距離砲撃戦に持ち込まれれば危ない……!」
まるで時間と命を削るように
フッドは砲撃を続けていた。
⸻
【176:午前6時15分25秒・ビスマルク艦橋 ― 「ストライクゾーン」発見】
砲術長シュテルツェル:
「敵第三斉射飛翔中!
しかし着弾位置は……後方寄りと予測!」
副長:
「ではこちらは?」
シュテルツェル:
「照準角度、最適化完了。
フッド後部の“装甲の谷”を
正確に捉えています。」
艦長リンデマン:
「いい。
次が勝負の第三斉射だ。
この距離なら“雨のように落ちる弾”になる。」
レーダー手:
「距離、31000!
敵速度上昇中!!」
艦長:
「構わない。
その速度こそ、奴らの急所となる。」
⸻
【177:午前6時15分35秒・プリンス・オブ・ウェールズ砲術室 ― 第二斉射の追い込み】
砲術長:
「砲塔1番・2番準備完了!
4番まだ調整中だが……!」
艦長リーチ:
「撃てる分だけ撃て。
完璧ではなく、“戦場に間に合わせろ”。」
火器管制員:
「射角・仰角、修正完了!!
発射許可!」
艦長:
「第二斉射、撃て!」
再びPOWの砲が吠える。
新鋭艦の砲弾は、弧を描いてビスマルクへ向かった。
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【178:午前6時16分・フッド第三斉射の着弾 ― “迫る死線”】
見張り員:
「左舷前方!
着弾!!
水柱!!
距離50〜70メートル!!」
副長:
「近い……!!
フッドの照準が合い始めている!!」
砲術長:
「問題ない。
奴らの弾道はまだ“均質”すぎる。
こちらは次で決める。」
艦長リンデマン:
「主砲、第三斉射――準備完了次第、撃て。」
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【179:午前6時16分20秒・ビスマルク第三斉射】
砲術長:
「第三斉射――発射ッ!!」
380mm砲の閃光が
戦場の空気を破裂させる。
弾丸は
“重力に従いながらも斜めに滑る”ような軌道で
落下を開始した。
見張り員:
「ビスマルク、また来る!!!
弾道が……さっきまでと違う!!
もっと……高い!!」
副官:
「これが……本気の照準か……!」
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【180:午前6時16分45秒・POW第二斉射の結果】
見張り員:
「右舷後方に着弾!!
250メートル!!」
副長:
「POWの弾はまだ脅威ではない。」
艦長リンデマン:
「焦る必要はない。
フッドに集中しろ。」
砲術長:
「弾道安定。
着弾まで――あと10秒。」
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【181:午前6時16分55秒・フッド内部 ― “死神の影が降る音”】
後部で作業を続ける海兵隊員たちは、
頭上の空気の“密度が変わる”のを感じた。
海兵隊員A:
「……今の音……何だ……?」
海兵隊員B:
「空気が……重い……?」
火器整備兵:
「おい……上を見――」
言葉が終わる前に、
巨大な影が後部上空を横切った。
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【182:午前6時17分00秒・ビスマルク第三斉射の着弾 ― 致命の前兆】
フッド見張り員(絶叫):
「直撃コース!!!!
後部甲板――!!」
凄まじい金属音と轟音が
フッド後部に叩きつけられる。
砲弾のうち1発は
後部上甲板の直前に命中。
装甲が薄い上部構造に大穴が開き、
火焔が白く噴き上がる。
副官:
「命中!!
後部に火災!!
被害軽微……と思われ――」
しかし次の報告が、
その声を切り裂いた。
損害報告班:
「後部弾薬庫付近で異常熱反応!!
火炎が流れ込んでいます!!」
ホランド提督:
「……なに?」
艦長カー:
「まさか……!」
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【183:午前6時17分10秒・ビスマルク艦橋 ― 狙い通り】
副長:
「命中確認!!
フッド後部、火焔!!」
砲術長シュテルツェル:
「狙い通り……
後部上甲板の“弱点”に落下した!!
あそこは装甲が薄い!!
次で仕留める!!」
艦長リンデマン:
「第四斉射、急げ。
フッドに反撃させるな。」
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【184:午前6時17分20秒・フッド後部 ― 兆候は始まっていた】
後部弾薬庫付近は、
通常なら分厚い隔壁で守られている。
だが――
第三斉射の“極めて悪い角度”で入った火焔が、
弾薬庫前の燃料タンク(軽油)に着火し始めていた。
整備兵:
「消火ホース!!
早く!!
火が……下に流れ込んでる!!」
海兵隊員:
「下層隔壁が……熱で歪み始めてる……!」
誰もまだ気づいていなかった。
この瞬間こそが、
**フッド沈没の“始まりの点”**だった。
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【185:章末(5章 3/15) ― 死神が片足を踏み入れた瞬間】
午前6時17分30秒。
距離は 30.6km。
フッド第三斉射は近距離化しつつ修正完了。
ビスマルクは照準の“核心”を掴んだ。
POWは依然として砲塔不調だが、
砲撃を続けている。
フッド後部では
“わずかな燃料火災”が発生しているだけ――
だが、それは序章にすぎない。




