第211章 5章《デンマーク海峡海戦:巨砲の交差と破滅》 2/15
2/15 ― “第二斉射/新鋭艦POWの初弾/ビスマルク照準最適化/距離の縮み” ―
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【162:午前6時10分30秒・フッド砲術指揮所 ― 第二斉射の準備】
砲術長:
「第一斉射の着弾を基準に補正完了!
次は当たる!!」
火器管制士官:
「風0.2度修正。
仰角+0.6度。
砲塔1番・2番、発射準備よし!」
艦長カー:
「よし……ホランド提督に報告を。」
通信士:
「提督、砲術指揮所より――
“第二斉射、準備完了”!」
ホランド提督(息を飲む間もなく):
「撃て。」
命令は刃のように鋭かった。
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【163:午前6時10分40秒・フッド第二斉射】
再びフッドが全身を震わせた。
三連装砲塔が火を噴き、
六発の巨弾が天空へ跳ね上がる。
見張り員:
「フッド、再射撃……!!
すげえ……これが“王家の剣”かよ……」
副官(POW):
「だが……これは賭けだ。
あの艦は装甲が……脆い。」
POW側にも緊張が走る。
フッドの運命そのものが
“第二斉射の威力”に重なっていた。
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【164:午前6時11分・ビスマルク艦橋 ― 静かに迫る殺気】
航海長:
「フッドの弾丸、飛翔中!」
砲術長シュテルツェル:
「補正角度を微調整せよ。
敵は速力を上げている。
こちらも照準を修正し続ければ……
次は当たる。」
副長:
「フッドの射撃はどうだ?」
シュテルツェル:
「やや後方に偏っている。
しかし奴らは修正が速い。“次の次”が危険だ。」
艦長リンデマン:
「ならばその前に、こちらが決める。
主砲、第二斉射準備。」
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【165:午前6時11分30秒・プリンス・オブ・ウェールズ砲術室 ― 初弾のための狂気】
砲術長:
「計算完了!!
しかし砲塔4番まだ不安定……!」
艦長リーチ:
「残りの砲で撃てばよい。
完璧を待つ余裕はない。」
砲術長:
「――承知!!
1番砲塔、発射準備!!
2番、続け!!」
火器管制員:
「射角良し……
仰角良し……
発射許可!」
艦長リーチ:
「プリンス・オブ・ウェールズ――初弾を撃て。」
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【166:午前6時11分40秒・POW初弾発射】
新鋭戦艦POWが
初めて“実戦で主砲を撃った瞬間”。
放たれた三発の356mm砲弾は
火花を引きながら上昇し、
白い朝空を裂く。
見張り員:
「右前方から新たな砲撃!!
プリンス・オブ・ウェールズからです!!」
副長:
「新鋭艦まで撃ち始めたか……!」
艦長:
「冷静にいけ。
狙うべきは“王家の剣”フッドだ。」
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【167:午前6時12分・フッド第二斉射の着弾】
見張り員:
「着弾ッ!!
後方200メートル!!
水柱!!!」
副長:
「近い!!
奴らの補正が完成しつつある!!」
艦長リンデマン:
「時間を与えるな。
次の射撃が来る前に“こちらが当てる”。」
砲術長:
「射角修正完了。
敵艦首の真下――
“斜め下方への雨”で貫く。」
艦長:
「第二斉射、撃て。」
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【168:午前6時12分15秒・ビスマルク第二斉射】
ビスマルクが再び咆哮した。
八門の380mm砲から
火焔が“斜めに飛び散るような形”で立ち、
砲弾が一斉に跳ね上がる。
砲術長:
「弾丸、飛翔時間30秒!!」
副長:
「着弾は……フッドの“後部”か……?」
艦長:
「いや――
あの艦は“前方装甲帯が強い”。
狙うべきは、
後部上甲板の薄い装甲だ。」
これが後に「運命の照準」となる。
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【169:午前6時12分45秒・POWの初弾着弾結果】
見張り員:
「プリンス・オブ・ウェールズ弾――
右舷前方300メートル、海面着弾!!」
副長:
「こちらから見る限り、まだ精度不足。
新鋭艦ゆえの未調整か。」
艦長:
「POWは後でよい。
フッドを落とせば、
英艦隊の士気は砕け散る。」
砲術長:
「あと20秒で着弾します。
弾道、安定中。」
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【170:午前6時13分・ビスマルク第二斉射の着弾】
フッド見張り員(絶叫):
「来る……!!
右舷後方――!!」
次の瞬間、
フッド後部の海面が爆発した。
着弾は艦の右側後方50〜80m。
水柱がフッドの甲板を叩きつけ、
後部砲塔周辺に衝撃が走る。
副官:
「近すぎる!!
奴らの照準が急速に正確になっている!!」
ホランド提督:
「第三斉射を急げ!
フッドは“距離を詰めて回避”する!!
速力上げ!!」
艦長カー:
「速力30ノット!
航路を北寄りへ修正!!」
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【171:午前6時13分30秒・フッド船体内部 ― 衝撃が伝わる】
フッド後部の通路を走る海兵隊員たちは、
水柱の衝撃で床から跳ね上げられた。
海兵隊員A:
「ぐっ……!
なんて衝撃だ……!」
海兵隊員B:
「これが……
世界最強戦艦の砲弾か……!」
整備兵:
「後部甲板、微細な損傷!
維持可能!
しかし次が当たれば……分からん!」
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【172:午前6時14分・戦場距離変動 ― 決定的な局面へ】
航海長:
「距離、32,500メートル!
敵、突っ込んできます!」
副長:
「フッドは“距離を縮めて装甲効果を最大化”する気だ!」
艦長リンデマン:
「ならば我々も前方砲塔を優先させる。
敵が接近するほど、
“砲撃転倒角(弾道角度)が変わる”。
狙いやすくなる。」
砲術長:
「第三斉射、準備……!」
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【173:章末(5章 2/15) ― “決戦距離が近づく”】
午前6時14分50秒。
距離はついに 31.9km。
フッドは突撃姿勢のまま速度を上げ、
ビスマルクも反撃の角度を固定しつつ前進。
POWは砲塔の不調を抱えながら
辛うじて後方で照準計算を続ける。
この距離、
双方の第三斉射が“決定打”になりうる距離。
次節からいよいよ
フッド第三斉射/ビスマルク第三斉射/POW第二斉射
が交錯し、
戦場の温度が「臨界点」に達する。
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