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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン23

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第210章  第5章《デンマーク海峡海戦:巨砲の交差と破滅》




1/15 ― “先に敵を見たのは誰か/照準計算の狂気/運命の第一射” ―



【151:午前6時02分・北大西洋/フッド艦橋 ― “視界の中の怪物”】


見張り員:


「北西――!

巨大艦影、はっきり見えます!!

艦首をこちらに向けています!!」


副官(息を呑む):


「……あれが……ビスマルク……」


 青灰色の水平線の向こう、

 霧に濡れた巨体が“動かない氷山”のように佇む。

 だが氷山ではない。

 あれは――“砲を向ける殺戮機械”だった。


ホランド提督(短く):


「戦闘開始だ。」


艦橋の全員が

その言葉で戦闘の現実へ引き戻される。



【152:午前6時03分・プリンス・オブ・ウェールズ艦橋 ― “数学と死の等式”】


砲術長:


「射距離……36,500メートル!

計算機に入力します!!」


火器管制士官:


「風速、東へ6。

海面温度の変動で照準がぶれます、補正を!」


砲術長:


「わかっている!

新鋭艦だろうと、計算は鉄だ!」


艦長リーチ(静かに):


「落ち着け。

我々は“フッドの側面援護”だ。

最初に撃つのは兄貴分のフッドだ。」


視界の奥で、フッドはすでに航路を北へ切っている。


艦長:


「フッドが突っ込む。

我々はその後ろを守る。

初弾が双方の運命を決める。」



【153:午前6時05分・ビスマルク艦橋 ― “距離が縮む音”】


航海長:


「距離――36キロ。

敵戦艦、2隻。

手前がフッド、後方にPOW。」


砲術長シュテルツェル:


「砲塔、全基旋回完了。

仰角よし。

三角測距、確立。」


副長:


「砲術長、最初の射撃は?」


シュテルツェル:


「……フッド。

あの細長い艦首、上部構造物の“薄さ”。

装甲配置の弱点は明白だ。」


艦長リンデマン:


「よし。

全主砲、フッドに照準。

敵の“王家の剣”を折る。」



【154:午前6時06分・英軽巡ガラテア/観測隊 ― “最初に見た第三者”】


 双方の巨体が近づく光景は、

 観測任務中の軽巡ガラテアからも見えていた。


観測士(双眼鏡を握りつぶすように):


「……まるで歴史の本が開いていくみたいだ……」


同僚:


「書かれるのは血か、鉄か、海水か……

どれにせよ“今日の歴史はここで決まる”。」


報告員:


「司令部へ送信!

フッド、ビスマルクと交戦開始!!」



【155:午前6時07分・フッド砲術指揮所 ― “伝統の名に賭ける一撃”】


砲術長:


「距離36,000!

まだ遠いが撃てます!」


艦長カー:


「よし!

第一斉射、用意!!」


火器管制士官:


「補正完了!

風、よし!

仰角、よし!!」


ホランド提督(鋼の声で):


「――撃て。」


 その瞬間、

 フッドの主砲“381mm砲”が

 世界を揺らす轟音を放った。



【156:午前6時07分30秒・砲弾の飛翔】


 フッドの三連装砲塔が火を吹き、

 六発の砲弾が空を裂いた。


 速度約800m/秒の弾丸は

 空を真上にえぐるように上昇し、

 弧を描いて降下を開始。


 弾丸が落ちてくる方向は――

 ビスマルクの“右舷前方”。


砲術長シュテルツェル:


「……フッドが撃った。

だが初弾は外れる。

こちらは落ち着いて照準を決める。」


艦長リンデマン:


「全主砲、準備……」



【157:午前6時08分・フッド第一斉射の着弾】


 海が爆ぜた。


 フッドの初弾は

 ビスマルクの手前200mに着弾。

 巨大な水柱がビスマルク右舷を包む。


機関兵:


「被弾なし!!

水柱のみ!」


副長:


「距離修正を急いでくるぞ!

奴らは“精密砲撃の英国”だ!」


艦長:


「こちらも撃つ。

主砲――」



【158:午前6時08分15秒・ビスマルク第一斉射】


砲術長:


「主砲一斉射――発射!」


 ビスマルクの8門の380mm砲が

 “艦体そのものを震わせる衝撃”と共に

 火を噴いた。


 砲炎は霧を蒸発させ、

 大気をゆがめ、

海面に光の閃光が走った。


副長:


「弾丸、飛翔!!」


航海長:


「目標、フッド!!」


 空気を引き裂く八つの弾丸が

 高速で弧を描き、

 フッドへ向かう――。



【159:午前6時08分50秒・プリンス・オブ・ウェールズ砲術室 ― “新鋭艦の焦り”】


砲術長:


「落ち着け!

我々は第二撃で決める!!

砲塔4番、急げ!!」


技術兵:


「油圧、まだ安定しません!!」


艦長リーチ:


「どのみち撃つしかない。

故障しようが砲は砲だ。

英国の“新しい戦艦”はここで証明する。」



【160:午前6時09分・ビスマルク第一斉射の着弾】


見張りフッド


「ビスマルク砲弾、来ますッ!!

方位右舷前方から――!」


 次の瞬間、

 フッドの左舷後方で海が裂けた。

 砲弾は艦の後方150mへ落ち、

 水柱が“艦全体を包むほどの高さ”で吹き上がる。


副官:


「……近い!!

修正すれば、次は当たるぞ!!」


ホランド提督:


「第二斉射、急げ!!」



【161:章末(5章 1/15) ― “巨砲戦の幕が上がる”】


 午前6時10分。

 両艦の距離は34キロ。


 フッドは第二斉射の準備に入る。

 ビスマルクは照準を微修正する。

 POWは必死に砲塔を整備しながら追撃の構え。


 ――海と空がまだ白い。

 その中で、

 両軍の主砲だけが“世界を塗り替える線”を描き始めていた。


 ここから、

 史上最大の“砲撃戦”が本格的に開幕する。



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