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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン23

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第206 第5章「香港攻略 vs 北アフリカ電撃戦(ロンメル)」





《新寺子屋・歴史講義ホール》


(黒板にはすでに南條講師が「香港攻略」「ロンメル」と大書きしている。)


南條

「今日は、“まったく違う戦場で起きた二つの電撃作戦”を扱う。

日本軍の 香港攻略(1941) と、ドイツ軍ロンメル率いる 北アフリカ電撃戦(1941–42) だ。」


野本

「先生、舞台が全然違いすぎます……」


南條

「違いすぎるのがいいんだ。

片方は“山と密集都市の要塞攻撃”、

もう片方は“無限地平の砂漠での戦車戦”。

しかしどちらも“初動の速さ”と“敵の油断”を突いた作戦であり、

軍事史的に比較価値が高い。」



■Part1:日本軍・香港攻略 ― “密林と要塞と都市戦”を同時に進めた作戦


●1-1 香港島の特徴:山・巨大要塞・密集市街地


香港は

・海に囲まれる

・山が多い

・島部と九龍側の二重構造

・都市は密集

・港湾は堅固

という“複合地形”。


イギリス軍は

・沿岸砲

・コンクリ要塞

・地下トンネル

を多数構築しており、

通常なら“歩兵だけで攻め落とすのは不可能”とされる。



●1-2 日本軍の突破:夜襲と火力集中


日本軍は、

九龍側から逐次制圧し、

夜間に渡海して香港島へ突撃した。


使用した兵器は

・九四式山砲

・軽迫撃砲

・機関銃

など、軽火力中心。


歩兵は

・山腹をよじ登り

・市街地を突破し

・要塞を側面から浸透し

という“地形無視の歩兵戦術”で戦った。


ロンメルの“戦車突撃”とは異なり、

こっちは“人間の脚力と投擲火力でねじ伏せる”スタイル。



●1-3 敵の弱点:英軍の兵力不足と政治的優先度の低さ


香港の英軍は

・イギリス本土防衛を優先され

・兵力は満足に送られず

・兵士は英軍・印軍・カナダ軍の混成

・火力は十分でも士気は高くない


つまり“地形は強いが人間が弱い要塞”だった。


日本軍はそこを突き、

初動の勢いで連続的に押し込んだ。



■Part2:ドイツ軍・北アフリカ電撃戦 ― “戦車将軍ロンメル”の真価


●2-1 舞台:サハラ砂漠の無限平原


北アフリカは

・山が少ない

・平坦

・遮蔽物がない

・補給は海から

・道路はほぼない


戦車戦には理想的だが、

補給が遮られれば一夜で全滅する戦場。


ロンメルは

「補給の限界ギリギリで戦車を走らせる」

という危険極まりない戦法を取った。



●2-2 ロンメルの“機動戦の天才性”


ロンメルは

・偵察

・奇襲

・側面包囲

・後方攪乱

・高速機甲突入


を同時に実行する“多重作戦”を好む。


使用した主要兵器は

・III号戦車(50mm砲)

・IV号戦車(短砲身75mm)

・88mm高射砲(対戦車の神兵器)

・ハーフトラック

・偵察装甲車

などの“装甲+火力+情報系統”。


その上で

“敵は自分と同じミスを犯す”

という読みの鋭さがあった。


ロンメルは

敵が陣地に固執して戦力を前線に集中させる癖を完全に把握し、

いつも背後や側面を突いて突破した。



●2-3 英軍の弱点:歩兵力は強いが統合作戦が下手


イギリス軍は

・部隊規模は大きい

・戦車の質は高い

・歩兵の練度も良好


だが

・戦車と歩兵が別々に戦う

・無線連携不足

・空軍との調整が遅い

という“20世紀前半の古典的欠点”を抱えていた。


ロンメルはこれを読み切り、

常に分断し、孤立し、包囲して破壊した。



■Part3:香港 vs 北アフリカ ― “同じ1941〜42年に起きた真逆の電撃戦”


南條

「ここが本章の核心だ。」


日本の香港攻略は

「歩兵と小火力で要塞を叩く都市戦」

ドイツの北アフリカ電撃戦は

「戦車と航空力で敵機動部隊を叩く砂漠戦」


方法は真逆だが、

両者には三つの共通点がある。



●共通点1:初動の読みが完璧


日本軍:

英軍が“香港は長期戦になる”と思い込んでいた

→ 実際は短期で一気に落とした


ドイツ軍:

英軍が“ロンメルは大攻勢できない”と思い込んでいた

→ 実際は補給ギリギリで攻撃を仕掛けた



●共通点2:機動の“方向”を読ませない


日本軍:

・密林から浸透

・山越え

・要塞側面から突入

“正面突破を避けて側背を突く”


ドイツ軍:

・広大な砂漠で回り込む

・夜間機動

・陣地を飛び越す

“戦線そのものを無視する”



●共通点3:敵の政治優先度の低さを突いた


香港:

→ 英国は本土優先で兵力不足


北アフリカ:

→ 英国は東地中海と本国防衛を優先し、作戦が遅れ気味


どちらも

“敵が軽視していた戦線を刺した”ことが勝因

となる。



■Part4:質疑応答(濃密版)


◆野本


「ロンメルの88mmってそんなに強いんですか?」


南條

「強いどころか、北アフリカの戦局を変えた。

もともと高射砲(対空砲)なのに、

水平射撃すると

“ほぼ全てのイギリス戦車を貫通できる”

という異常な性能だった。」


野本

「え、ずるい……」


南條

「イギリス軍は“対空砲を対戦車に使う”発想がなかったので、

初見殺しだった。」



◆富山


「香港の日本軍って、補給大丈夫だったんですか?

またギリギリじゃない?」


南條

「ギリギリどころか

“綱一本でぶら下がってる”レベルだった。」


・弾薬:数日分

・食料:現地依存

・水:井戸

・砲弾:軽砲のみで節約

・医療:不足


しかし英軍側が

・混成部隊で士気低下

・要塞の一部が反撃に向かない

など内部崩壊していたため、

日本軍は火力不足を“勢い”で補った。



◆亀山


「歩兵で要塞を落とすって、どうやるの?」


南條

「三つの技術が必要だ。」

1.夜襲

2.側面浸透

3.手榴弾と爆薬の投擲技術


要塞は正面から撃つと不利。

しかし側面は薄い。

日本軍は地形を歩いて読める軍隊だったから、

“どこに隙があるか”を見抜けた。



◆小宮部長


「ロンメルってやっぱり天才なの?」


南條

「天才だ。ただし“持続性のない天才”。」


・初動戦力の投入

・後方攪乱

・奇襲性

・敵の心理を読む

ここは天才。


しかし

・補給計画が脆弱

・勝ちすぎて前に出過ぎる

・政治的判断が弱い

・部下の疲労管理が甘い


という欠点も多い。


「短距離走の天才」であって、

「マラソンの天才」ではない。



◆橋本副部長


「戦車の操縦って砂漠だとどんな感じ?」


南條

「まず“揺れる”。

次に“砂で詰まる”。

最後に“オーバーヒートする”。」


つまり戦車にとって最悪の地形だが、

ロンメルは

・夜の低温時に移動

・整備兵を大量配置

・故障車は放棄して前進

という“機動の鬼”だった。



◆山田


「日本軍が北アフリカにいたらどう戦ったと思います?」


南條

「間違いなく“浸透夜襲”と“近距離戦”。

ただし戦車戦では勝てない。」


日本軍は地形適応は高いが、

砂漠の長距離機動戦には構造上向かない。



◆重子


「香港戦とアフリカ戦を一緒に学ぶ意味は?」


南條

「軍事史の基本だからだ。」

1.どんな軍隊も“得意地形”がある

2.敵の政治的優先度が勝敗に影響する

3.初動の読み違いが戦争全体を決める


香港と北アフリカは、

その“原理”を極端にわかりやすく示している。



■Part5:講義後 ― 暇つぶしサークル(小劇場)


富山

「ロンメル、ゲームに出てきそうね。強キャラっぽい。」


野本

「香港は逆に、怖い……

要塞とか夜襲とか、なんかこう……映画じゃないのに映画みたい。」


亀山

「私は砂漠でタンクが走ってるのが想像つかないわねぇ。」


橋本副部長

「砂漠+III号戦車+88mm……最高。」


小宮部長

「戦車の話ばっかり。」


山田

「日本軍の歩兵の“機動力で押す”感じもロマンあるっす。」


重子

「戦場って、やっぱり“人間と道具”の両方が絡むのね。」


南條(いつものように背後から)

「次回は 第6章:フィリピン攻略 vs モスクワ攻防 だ。」


全員

「先生、出現の仕方がホラーですよ!!」


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